第14話 Bランクレイド ズメイ討伐戦(3)
火魔法を使うエヴァが準備していた長文詠唱は不発に終わり、
叫び声と共に現れた4人の冒険者によって、ズメイは討伐されたのだった。
「きみたちっ!大丈夫か。状況は?」
リーダー格らしき冒険者が口を開いた。
「住民の死者は、、おそらくゼロです。冒険者は、Eランク冒険者7名が死亡しました。生存者は、、、7名です。」
周りを見渡して確認をし、シュー・ガが報告をした。
斧使いのマレンシー、スカウトのミー、毒液を受けたシャスダルク、ダスティンたちがやられていた。
「そうか、、、。犠牲者の冥福を祈ろう。ここの責任者はどこにいるかな?」
鳥のような姿の男が団長の居場所を尋ね、救護班と住民が避難した先へと向かって行った。
「シュー、、、彼らを知っているのかい?」
タケミは虫族のシューに尋ねた。
「ああ、金のタグを付けていただろう?全員Bランク冒険者だ。真ん中の男は鳥族の戦士で【白ワシ】と呼ばれるビアティ・オーゼルだ。上空1000mからの急降下で、ミスリル製の両足武器で打撃を与える「メテオダイブ」で、大型のモンスターをも葬り去る。有名な男だよ」
鳥族、、、白ワシ、、、なるほど。そんなのも居るのか。
「あとはエルフ族の弓使い、犬族の戦士、それと、ワシと同じ虫族のロガッタンだ。
ロガッタンも「リッパー」の二つ名で呼ばれている名の通った戦士だ。」
ロガッタンと呼ばれた虫族の戦士は、カマキリのような姿だった。確かにリッパーっぽいな、、、とタケミは思った。
団長と話をつけた4人のBランク冒険者が戻ってきて、アリーシャを含むその場にいた冒険者たち全員を集めて話を始めた。
「ボクがリーダーのビアティ・オーゼルだ、よろしく。」
鳥族の男が自己紹介を始めると、他の3人もそれぞれ名乗りはじめた。
「私はエルフ族の弓使い、フローレンス・エルゼア」
「俺は犬人族の戦士、ヌーだ」
「虫族のロガッタン」
彼らが名乗りを終えると、タケミたちもそれぞれ自己紹介をした。
「さて、レイドの討伐の清算についてここで話をさせてもらうとしよう」
オーゼルが続ける
「まず、魔物ではないため核は得られない。皮、肉、牙などの採取部位と討伐報酬のみの配分になる。」
(そうか、魔物じゃないから核どころか経験値も無いのか・・・)
タケミは少し愕然とした。
「討伐報酬は銀貨1000枚。これはこの場にいる全員で等分配だ。採取部位についてのみ、討伐貢献度に応じて相談という形にさせてもらいたい」
なんと、討伐報酬の分配は、Fランクのタケミたちも、Bランクの彼らも等分配すると言い出した。
「死者含めて14名と、我々4名。合計18名で等分すると55枚。端数はクズニカへ寄付としたいが、宜しいか?」
(犠牲者となった7名にも等分するのか、、、なるほど。遺族への支払いとかギルドの人も言っていたな。)
「そして、採取部位としては、皮は全員で山分け。肉は量が多いので、ここで今日調理して食して、残りは収納魔法で持ち帰りたい者は好きなだけ持ち帰り、残りはクズニカで保存食にしてもらう。」
蛇肉を食べた事はないが、、、、美味しいのだろうか?
「最後にズメイの牙だが、毒のある2本の上牙。討伐貢献度に応じてというのはこの件だが、牙は2本しかない。我々4人も普段別々のパーティに所属しているので、これはギルドに納品して報酬に換金して分けたいと思っている。討伐貢献の部分については・・・」
そこまでオーゼルが言いかけたところで、シュー・ガが口を挟んだ。
「我々は全くダメージを与える事が出来ず、貢献などできていないのだが・・・・」
シューの意見を聞き、オーゼルが返答をする
「今回の討伐は非常に楽だった。というのは、ズメイが完全に動きを止めてくれていたからだ。到着時点で地上にズメイが横たわっていたからな。地中に逃げられたら長期戦になるところだ。そこで、到着時点までの戦闘時の状況を教えて欲しい」
「それならば、そこにいるFランク冒険者のタケミが、重力魔法でズメイを重たくすることで足止めしていた。」
シューが説明する
「そうか。ダメージという部分ではほとんど与えられてはいないが、あの足止めは上出来だった。それでは、換金後の牙の配分は我々4人とそこの貢献者くんで行う形で良いかな?」
オーゼルの意見に異議を唱えるものは居なかった。
討伐参加報酬として55銀貨は貰えるわけだし、生き残っただけでもラッキーだった。
ギルドへ戻り換金した牙は銀貨1000枚で討伐報酬並みだった。これを5人で分けたため、タケミの報酬は200銀となった。
「オーゼルさん、少し聞いてもいいですか?」
タケミは白ワシに話しかけた。
「ん?何かな?」
オーゼルは身長160cmにも満たない。上空1000mからの急降下でのあの威力の技について、タケミは聞きたかったのだ。
「上空からの急降下の技について、、、聞きたくて」
「ああ、何を聞きたいんだ?」
「はい。自分は風魔法と重力魔法を使えるので、あの急降下の技を真似したら出来るだろうか、と」
タケミは今後のために、戦い方について考えていたのだ。
「なるほど。。。」
オーゼルは少し考えこんで
「まあ、止めておいた方がいいだろうな」
と言った。
「え、なぜです?」
タケミは尋ねた
「ボクは鳥族だ。空はもともと飛べるし、空中からの急降下で敵を仕留めるのは本能的な戦闘方法なんだ。上空1000mからの急降下で正確に敵を仕留めるのももちろんだが、その飛翔と急降下、それに衝突の衝撃に対しても耐性がある。それに専用の【ミスリルの鉤爪】で攻撃する衝突時の反動からの【保護魔法】で自身を保護している。保護魔法を修得しなければ、キミが僕の真似をした瞬間、衝撃で自身の内臓が潰されてしまうんじゃないかな。」
確かに。生身の身体で上空1000mへ急上昇し、そこから一気に急降下。
ジェットコースターどころではない。敵を正確に狙うのは視力の問題もあるだろうが、1000m上空からというのは、無理な気がする。衝突時の衝撃で内臓が・・・
と言われると確かに。身体は大丈夫でも、脳と内臓が大丈夫な気がしない。
「そうか、、、ありがとうございました。なんとなく想像出来ました」
タケミは少しがっかりしながらお礼を言った。
「まあ、気落ちせずに。気圧や衝撃、環境変化への適用や保護の魔法は風魔法と重量魔法の応用なんだ。その2属性に適性があれば、いずれ出来るようになるさ。」
オーゼルのその言葉で、タケミは驚いて振り向く
「重力魔法以外に、風魔法も使えます!ありがとうございます!!」
水魔法も使えるので、もしかしたら水中での移動魔法も確立出来るかもしれない。
純粋な攻撃魔法というよりも、タケミはその魔法の応用について色々アイデアが浮かんで来て、ワクワクしてきた。
思っていた世界と全然違うけど、発見の多いこの異世界。いまだLv4のままだけど、Bランク冒険者でもあれほどの強さなのだ。タケミはもっと強くなりたいと本気で思った。
「キミ、名前は何だっけ?タケ?」
オーゼルが改めて問いかける
「タケミ・ナカタです。武神タケミナカタの加護を持つ者です。」
タケミは初めてタケミナカタの名を、胸を張って答えた
「タケミナカタ・・・武神か。聞きなれない神様だが、覚えておこう」
オーゼルたちと別れを告げ、アリーシャと待ち合わせをしているいつものシノスの食堂へ向かった。
ピコンッ
ステータスウィンドウにメッセージが表示された
「武神の名を広めました。信仰ポイント5」
そういえば、最初にタケミナカタから、名前を広めて信仰を集めろと言われていたのだった。
(そうか、武神タケミナカタの名を、こうして広めていけばいいのか・・・)
この世界で、先も見えない状況だったが、ようやくタケミは道が見えた気がしていた。
タケミ・ナカタLv4ヒト族 ファイター
武器 無し
防具 服、靴
武神の加護、タケミナカタの寵愛
アビリティ「童帝」
魔法Lv 水1、風1、無1、重力1
所持アイテム:ボード、こわれたトーチ
所持金 92銀
報酬 初日報酬8銀貨、二日目報酬8銀貨、討伐参加報酬55銀。貢献度報酬200銀。
合計 銀貨363枚
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