第13話 Bランクレイド ズメイ討伐戦(2)

【クズニカ】

タケミがクズニカへと走り出した頃、タケミが関所の様子を見に行った事を報告しに詰所へ来た他の冒険者たちも、異変を感じ取っていた。


「団長殿。この、、、地響きは、、、、、」

地震のような、地鳴りのような、、低く鈍い振動が聞こえ始め、徐々に大きくなる


ドオオオオオオォォォォォォン・・・


詰所の隣にあった平屋根の建物が吹き飛んだ。

と、その建物の中から巨大な影が立ちあがる


先ほどまで平屋根の小屋だった場所に、急に大きなビルが建ったかの如く、詰所のテントとその周辺全てが陰に覆われた。


直立不動で立ち上がった姿のズメイが、その細い両目で周囲を見渡す。

虚ろな視線は、周囲を見ているのか見ていないのか。


「くっ、、、ズメイ。なんでこんなド真ん中にいきなり出て来た!」

団長が叫ぶ。彼が数年前ズメイ襲撃を受けた時は、彼はまだ兵長だった。

「あの時は、、、20人が犠牲になった。二度とそんな犠牲を出すわけには」

詰所の中からケガ人を運び出す詰所のスタッフ。


周辺を見張っていた冒険者も集まって来た。

「団長殿!あと一時間だ!食い止めるぞ」

マレンシーがその斧を振りかぶってズメイに立ち向かう。

シュー・ガとミー・ハイ・トラストスも連携し、ズメイの陽動を行う。


Fランク冒険者の魔法使いエヴァと、スカウトのアガタ、ソホトアもズメイの周囲を囲うように配置につく。


詰所からの避難が終わるまではズメイをここから移動させるわけにはいかない。

それぞれが、遠距離攻撃の出来る武器などで攻撃を開始するが、

攻撃が直撃しても、ズメイは意にも介さない様子で、ジッと様子を見ていた。


タケミが到着すると、冒険者たちの集中攻撃が既に始まっていた。

「アリーシャっ!」

詰所からケガ人に肩を貸しながら出て来るアリーシャを見つけてタケミは叫んだ。

タケミは少し安堵した。胸騒ぎがしていたのだ。アリーシャがズメイにやられてしまうのではないかと。


マレンシーの大斧が直撃しても、ズメイには傷一つ付けられない。

そうなれば、その場に居る冒険者では討伐は完全に不可能だ。

「視界を遮れっ!住民の避難が済むまで、一歩も動かすな!」


団長が叫ぶ


しかし、魔法攻撃も弓矢も投石も、ズメイは無視したままだった。

(おかしい、、、どこを見ているんだ?まったく気にもしない。なんだ・・・)

タケミは素手なので、遠距離の攻撃手段がない。


ケガ人に減重魔法をかけて軽くし、避難を助けたり、歩けない人を運んだりしていた。


ギィィィィィィィィィィ!!!


急にズメイがうなり声をあげたと思ったら、舌先からビュッと液体を噴射する

「ぎゃああああああっ」

Eランク冒険者の一党、シャスダルク、ダスティンたちが悲鳴を上げた。


ジュゥゥゥゥゥ・・・


装備していた防具ごと、身体が溶かされていく。

「毒液か!」

舌先から放たれた液体は的確に周囲の冒険者を狙い撃ちしていた。


「そうか、、ピット器官だ。。。」

ヘビ類は赤外線のように体温を感知する器官が発達していて、目を覆われても獲物を追跡出来るようになっている。

元の世界での知識をタケミは思い出していた。

「アイツが蛇の一種なら、同じかもしれない。このままじゃ・・・」


タケミは近くにあったがれきを思い切りズメイの口元へ投げ込んだ。

ジュゥゥゥゥ・・・

舌先から放たれた毒液ががれきに命中し、がれきが溶けて落ちていく


「みんなっ!アイツは蛇だ、視界が見えなくても熱で探知できる。火や熱の魔法でかく乱するんだ!」

タケミが叫んだ。


しかし、熱魔法を使えるダスティンはさっきの攻撃でやられてしまった。

火魔法を使えるのはエヴァ一人で、他はスカウト、ファイター、アーチャーだけだ。


タケミはふと思いついて、魔道具のトーチを取り出して、魔力を込めてみる

「・・・暖かい。トーチの魔道具は周囲を照らすのに熱を発している」

これなら・・・


タケミはズメイの頭上までジャンプし、トーチの魔道具を点けたままズメイの片目に攻撃を仕掛けた。

「ギィィィィィィィィィ!!!!」


これまでいくら攻撃を受けても微動だにしなかったズメイが、初めて攻撃を嫌がった。

「みんな、トーチやランプの魔道具は熱を発する!これでかく乱するぞ!」

タケミの声で、冒険者たちはそれぞれに魔道具を使用する

その間にエヴァが火魔法の大技を準備するために長文詠唱に入った。


「重力魔法!加重100%っ!!!!!」

ズメイに張り付いたタケミは、重力魔法でズメイを重くしてやった。


ズゥゥゥゥゥゥンンンンンンッ


急に自身の重さが二倍になり、その巨体を支える事が出来ず、ズメイは地面に倒れ込んだ。

ダメージが与えられなくとも、動けなくするだけで上出来だ。

続けて水魔法のウォーターガンで、ズメイの頭部を水浸しにして、熱源探知の邪魔をしようとした。

「水魔法!ウォーターガンッ」

しかし魔法が発動しない


「しまった、マナ切れか・・・」

タケミのLvはまだ4。魔法を連発すればすぐにマナ切れになるのは当然だ。

MPが10倍になると言っても、ケガ人の救助でも魔法を使ってしまっていた。


ズメイは倒れ込んだまま舌先から毒液を放って冒険者を威嚇している


(重力魔法の効果が切れたらもうアウトだ・・・)

冒険者たちも撤退しないと、全滅するだろう。


「そこまでだっ!」

大きな叫び声が響いた瞬間、空から急降下する影がズメイに向かって突進した。

ドンッ!!!!

大きな音と衝撃がした途端、土煙が立ちこめる。

ヒュンッ!!

そして強烈な矢が倒れたズメイの目を射貫く。

ズバッ!!

続いて小さな影がズメイの舌を切り落とした。

さらに続いて、人影が土煙を吹き払う威力でズメイに連撃を叩き込んだ。

ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!


ズメイの巨体が揺れる

ギギギギイギギィィィィ!!

大きく口を開けて、ズメイの頭部が空を仰ぐ


先ほど急降下してきた影が飛びあがり、再び急降下をしてきた。

ドンッ!!!

さっきよりもさらに大きな衝撃がズメイを直撃し、ズメイの頭部を破壊した。


土煙が収まり、息絶えたズメイが横たわる姿が確認できた。

その場所にいたのは4人の冒険者だった。








































































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