敬具 あの日の夢へ
俺たちは、水族館で班は3人から4人という小規模なものだった。そのおかげで俺は、話す決心が着いた。
俺はまず、自分が予知夢を見ることを伝えた。2人とも信じはしなかった。でも、そっちの方が、俺も話しやすかった。信じてしまえば、結彩奈のようになってしまうのではと怖かったんだ。そして、結彩奈のこと、凛花の母親のことを言った。時間が経って、お昼になって、俺は1枚の写真を凛花に渡した。実は、結彩奈の母親から、凛花に渡すように頼まれたものだった。そこには、2人の女の子が写っていた。その容姿は、瓜二つで、まるで、鏡のようだった。凛花は、写真をぎゅっと握って泣いていた。そして、
「お姉ちゃんだ。結彩奈だよ。それで隣にいるのが私よ。思い出した。全部。私孤児院で育ってた訳じゃない…」と、震えながら言った。泣きじゃくったその姿は、まるで、小さな女の子だった。
「元谷!女子を泣かすとはなにごとだ!」と、周りの人達が集まってきたために、俺たちは早めに、お昼を終わらせ、水族館内に戻った。
水翔は、居ずらくなったらしく、イルカの所にいると言って行ってしまった、気を使ったんだろう。俺達は、大水槽の前のベンチに座っていた。
「俺が凛花に、告白した時に、守らせて欲しいって言ったのは、予知夢で今日、凛花がいじめられてしまうと見たからだ。でも、次の予知夢では、俺の生徒手帳に書いてあった結彩奈の名前を見て泣き叫んで、俺が学校で吊るされてしまう夢だった。そして…」
「ストップ。もういいよ、全部思い出したんだし。結彩奈がよく言ってた。カイくんっていう子すごいんだよいっつもなんでも器用にやれて、未来も当てちゃうの!って。」
「それは、俺のことで間違いないよ。実の所、俺も忘れていたんだ。結彩奈の事を。思い出したのは、だいたい4ヶ月前とか結構前なんだ。水翔が転入してきて、そこではっきりと思い出したんだ。あっ、もし良ければ、結彩奈の日記とアルバム渡すよ。凛花が持つべきだと俺は思うよ。」
「ありがとう、ありがとう。」
また泣いてしまった。きっと辛かったのだろう。今の両親にも、前の両親のこともある。そして、記憶がないという不安。それは、俺が経験したことよりも、耐えることがどんなに辛かったんだろうか。
俺は、結彩奈のことをちゃんと凛花に言ったことに後悔はなかった。
校外学習から帰り、1ヶ月後。
俺と凛花は、墓地に来ていた。
「「結彩奈会いに来たよ。」」
俺たちは、それぞれの思いを込めて、手を合わせた。すると、どこからか、一匹の蝶が来た。まるで、「来てくれてありがとう。待ってたんだよ。」言わんばかりだった。
夕焼けに包まれて、凛花は、言った。
「澮くん、澮!はやく捕まえてみな!私、今度本当のお母さんの元に帰っちゃうからね。」
この前、凛花は、実の母親と会い、今の両親とも手続きを行い、実の母親の元へと帰っていった。だからこそ、俺はこの子を捕まえなければならない。もう二度と結彩奈のようにならないために、大切な人を失わないためにも、だから俺は、予知夢を使っても、君たちを守らなきゃ行けないんだと勝手に思った。
「澮くん、さよならありがとうね!」
「さよならなんて、させないよ。俺は、凛花を守るって結彩奈とも約束したんだ。だから俺は凛花、君を捕まえるよ。」
と笑いながら俺たちは夕日に照らされた、街を走っていった。
拝啓 いつか見たあの日 江藤渚 @IceRose234
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