第1話

 元谷澮は、他人から見た第一印象は、根暗そうで人と話したりすることを避けているようにも見え、長く伸びた前髪から目が合うと、その眼はまるで、睨んでるかのようで、誰も彼とは話そうともしなかった。そして、当の本人、元谷澮もまた話そうともせず、ずっと有線のヘッドホンをつけ、スマホを眺めていた。

 しかし、高校入学後に行われた体育祭で、澮くんの競技している姿や前髪が風で上がり、顔が見えると、女子達はすぐこういった。

「え、あれって陰キャの澮くんじゃないの?」

「運動できたんだ。てか、足はやくね?」

「前髪上がって、さっき顔見えたんだけどさ、めっちゃかっこよくね?」

「どうしよう、惚れたわ」

 とか、ずっと言っていた。すると、女子たちの方へ、カーブで転倒した選手が地面を擦りながら、突っ込んで来たのだ。しかし、元谷澮という子は、それを予知しているかのように、女子達を助け、転倒した選手を救護したのだ。そして、救護の手伝いをしたのがこれまでの経緯を話していた、私、高梨凛花である。これが私と、谷元澮くんとの出会いであった。


 俺は、高校の入学式までずっと、予知夢を見ていた。もちろん、入学式終わっても見続けていた。入学式前の予知夢は、同じ高校の女子やモテてる男子の予知夢を見ることがほとんどなのだ。しかも、女子の予知夢は、恋愛関係の予知夢を見ることがほとんどで、モテる男子とは言ったが、男子は、部活の試合、恋愛など色々な悶々を抱えている予知夢が多かった。まだ、マズイ夢を見た訳ではなかったのが、不幸中の幸いだと思った。

 入学式後に見た予知夢は、体育祭に関してだった。女子達が話に夢中になっていると、そこに転んだ人が突っ込んで来て、女子達にぶつかり、転んだ人は気の毒にも、女子や男子にわざとだろとか馬鹿にされるようになり、転んだ男子は、野球部らしいが馬鹿にされ続け、俄に悪い噂が流れスタメンに入れず、試合にも負け、泣く泣く引退という、悲惨な予知夢を見たのだ。

 俺は、何となくこの予知で少しでもこの気の毒な男子を助けてあげようと思ったのだ。

 そこで、なるべく俺が目立つことによって、転んできた人を目立たせないようにしようと考えたのだ。思いのほか、この効果は抜群だった。しかし、予知夢にはいなかった、女子が現れたのだ。そこで、俺は思い出したのだ。忘れていたこの予知夢の絶対を。それは、俺が、予知夢で見た、予知を変えようとすると、またどこかでその予知夢では、見えていなかった別の変化が起きるのだ。その別の変化がどれほど大きく変わるかは、計り知れないのだ。そこで俺は、転んだ男子の応急処置を予知夢にいなかった女子に任せ、俺はとにかくその場所から逃げたのだ。

 あぁ思い出したくないあの記憶を思い出してしまった。俺はその場で、頭を抑えながら意識を失っていた。

 俺はまた予知夢を見たのだ。




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