拝啓 いつか見たあの日

江藤渚

拝啓 いつか見たあの日

「…くんは、私のことどう思ってるの?私もうすぐ、居なくっなちゃうよ。」

 夕暮れの公園、ブランコを漕ぎながら、あの人は、笑いながら少し悲しそうに言った。

「はやく、私を捕まえなよ!じゃないとほら、どんどん遠くへ行っちゃうよ。」あの人は、大きくブランコを漕ぎ、そこから思いっきりジャンプをして着地をした。そして、走り出して、小さく笑った。公園の前に、一台の車が見えた。あの人は、小さく震えていた。そして、

「あぁ、…くん。もう会えないかも。ねぇ、またどこかで会えたら、、いや、…くんの気持ちが変わったら、私を捕まえてね。」

「さよなら、…くん。」

 あの人は、泣きそうな目をしていた。多分、もうあの人とは会えないのかもしれない。だけど、あの人は、俺に助けを求めている気がした。あの人が、車に乗り、音を立てて閉まった車の扉。そして、発進して行くあの人を乗せた車を俺は、ずっと見つめていた。夕日とともに。

 そこで、俺は目が覚めた。顔を洗うため、洗面所に行き、鏡を見ると、涙のあとがあった。多分、普通の人ならきっと涙のあとがどんな夢を見たのか覚えていなくて、困惑するのだろうが、俺は全て覚えていた。なぜなら、俺は生まれつき、予知夢が見れるからだ。それは、明日の天気、明日起きること、明日のご飯とかいう予知夢もちろんだが、他の人がどこで何が起きるかも全て予知してしまうのだ。これを、羨ましがる人がもしかするといるかもしれない。だが、これ程鬱陶しいものは無い。考えてみてほしい、人が幸せな予知夢を見る。だが決して、それが本当に幸せなのかどうかを、俺は予知夢の中では、その出来事を目撃し、その人たちの心を読めてしまうのだ。つまり、一方の人は、幸せでいっぱいだが、もう一方は、見かけは、幸せそうだが、心の中は、泣きじゃっくていたり、悪い時は、その幸せな人を恨んでいたりするのだ。それを、毎度寝る度に、見て、起きても覚えているのだから、嫌で仕方ない。だが、ある時は、ちょっとずるいこともある。それは、テストの時だ。俺はある時、学校の先生しかも俺の通っている学校の先生が、テストを作り、その問題を解いているという、嬉しすぎる予知夢だった時もあった。もちろん、その問題を解いている夢は覚えていたからその時のテストは、楽勝だった。

 だけど、この俺の能力を人に話す気はなかった。小さい時の俺はこの能力について何もわかっていなかった。だからよく、クラスメイトに、何が起こるか話していた。しかし、俺の見る夢は、100%絶対起きる。すると、クラスメイトから、怖がられた。いつの日か俺は、そうやって距離を置かれるのならばと思い、この能力について話すことをやめた。

 そんな、俺、谷元澮は、高校生になったのだ。

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