令和5年
五月五日 くまのインド洋派遣での一幕
端午の節句といえば、柏餅に鎧兜を飾り人の子供の成長を喜び祝う行事だ。【艦霊】は就役すれば、大人のような扱いになるためだろうか、海自よりも造船の【道】の方が盛り上がっているという印象だ。
「今年は鯉のぼり……揚げる人がいないのか」
二年前までは【せとゆき】が、去年は【くまの】が引き継いで揚げていた鯉のぼりを今年は見ていない。理由は簡単だ【くまの】は先輩たちとインド洋派遣で行ってしまったからだ。俺は来日した仏艦のホストシップを任されていたので、揚げられていないことに気が付いたのは、つい二日前のことだ。何もない青空を眺めていたら、携帯端末がぽこんと軽快な音でメッセージを受け取ったことを知らせる。画面を見れば、嬉しそうな顔をした【くまの】の写真。向こうで一般公開をしているという旨の言葉と共に写真がもう一枚。
「なんだ、持っていってたのか」
灰色の艦を竿にして、異国の雲の波間を泳ぐ赤い鯉が大きな口を開けていた。
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