三月二十二日 くまのと贈り物
「【くまの】就役おめでとう」
この日は兄が珍しく長崎を離れて、横須賀までやって来ていた。そして、祝いの言葉と共に小ぶりの細長い箱を俺に手渡した。
「ありがとう、開けていい?」
「いいよ」
包装紙を破き箱を開ける。箱の中には明るい黄色のペンが入っていた。箱をポケットに押し込み、キャップを開けるとひし形の尖ったペン先が現れた。
「万年筆だ!」
「これから何かにサインする機会も増えるだろうから」
「【もがみ】、ありがとう!」
兄が自分のために選んでくれたということがなによりも嬉しかった。
「じゃあ、俺まだ訓練あるから戻るね」
「うん、ありがとう。 また、【道】で」
スッと【道】に入る兄を見送る。一緒に就役できなかった歯痒さはこの贈り物で一気に吹き飛んでしまった。
「【もがみ】は青がいいかな……」
初任給で買うものはもう決まっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます