11話「三匹の蛇」

夜も遅いので湯冷めしないうちにベッドに入る。


侯爵家の人間がどう出るか気になるので、部屋のドアに鍵はかけてず、結界も張らずにおく。


野生の狼のいる森や凶悪なモンスターの徘徊する密林で、一カ月野宿をしたこともある。


人間の百人や千人や一万人に……寝込みを襲われたところでどうということはない。


万が一侯爵がエミリーを性的な意味で襲いにきたら、侯爵の逸物を切り落とし、手足を縛ってオークの群れに捨ててこよう。


巣を作って待っている蜘蛛になった気分だ。


誰が罠にかかるかしら?







夜中に足音が聞こえ目を覚ます。


不審者はドアの隙間から蛇を三匹入れて、去っていった。


緑色のどこにでもいる蛇だ、全長は約五十センチ。毒蛇ではないな。


部屋に投げ入れられたのが毒蛇だったら、侯爵家に落雷を落として全焼させているところだが、普通の蛇なので許してやろう。


蛇達をギロリと睨むと、三匹ともすくみ上がった。


蛇の方が人間より賢い、どちらが強いか本能で理解できるのだから。


「あんたたち、私の下僕になるなら命だけは助けてあげる」


三匹の蛇は首を縦に振った。


「お利口さんね」


指先を切り、蛇に私の血を与える。


「あとは名前ね、面倒だからアインスツヴァイドライでいいわ」


魔女の血を与え、名を授け契約成立。


私の下僕二になったことで、三匹は普通の蛇より格段に賢く強くなった。


下級の冒険者では三匹に敵わないだろう。


「早速だけど教えてくれる? 誰があなた達をここに連れて来たのかしら?」


「シツジ」


蛇の一匹が話す。


「執事に命令したのは誰?」


「コウシャク」


なるほど侯爵の指示だったのね、全てが終わったら侯爵を尿管結石にしてやる。


アインスはこの部屋に残って私のいない間誰が部屋に入ったか教えなさい。他の二匹は屋敷内に潜伏し、侯爵と使用人の様子を探りなさい」


蛇たちはこくんと頷いて、一匹はこの部屋の天井に隠れ、残りの二匹はドアから出ていった。


思いがけず、いい下僕が手に入ったわ。


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