第84話 新天地の扉

「綾乃ちゃん、パパになんか言った?」


「ううん……ああそうだ、新さんの会社は仕事が減ってるって話をしたかも」


「そうか……それでかも……」


「どうしたの?」


「今の俺が契約してる会社は、マサキグループに買収されたんだってさ」


「えっ、そうなの、じゃあ新さんはパパの会社の契約社員ってことになるの?」


「まあそんなところだね」


「そうなの……」綾乃は不思議そうな顔をしている。


「先輩は週3日高崎に通うし、それに留美さんはヘッドハンティングでマサキに引き抜かれたらしいよ、だから高崎に引っ越すかもね」


「そうなの、新さんも高崎にいくの?」


「どうやら火・木の2日は本社勤務になるらしいね」


「えー、じゃあみんなパパの会社に集まっちゃうじゃん」


「そうだね、そんなことになるね」


「だったら私も新さんと一緒に高崎へ行く!」


呆れた顔で「じゃあパパに頼んでみたら?」と言うと。「うん、頼んでみる」とうなずいた。


「やめなさい!そんな親の権力を笠に着るようなことは」嗜める。


「だって私だけ仲間外れは嫌だもん」口を尖らせた。


 夏も終わり畑に植えた野菜は、笹原さんのサポートもあってプチトマトやピーマンなど収穫できた。


「新さん、プチトマト美味しいね」嬉しそうに食べている。


「そうだね、美味しいね……でも畑を続けるのは難しくなるかもしれないね」空を見上げる。


俺はマサキ本社に出社した。将暉パパは社長の顔で「おはよう」と挨拶した。


「おはようございます」俺も社員の顔で挨拶した。


そして小さな部屋へ通される、そこには大きめの机と少し小さい机が置いてあり棚なども用意してある。


「ここが新くんの新しい仕事場、CSRなどを行う部署だ、君の望んだ部署だからやってもらえるよね」将暉社長はニコニコしている。


「思ったより早くなってしまったようですが、逃げるわけにもいかないですよね観念するように答えた。


「どう進めていくかは全て新くんにお任せだ、好きなようにやってくれ」


「はい、どこまでやれるかは分かりませんが、自分なりにやってみます」静かに答えた。

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