第48話 家庭訪問
水曜日はすぐに来てしまった。僕は朝からソワソワと落ち着かない。
「大丈夫よ新さん、パパは怖い人じゃないし」
「そう……この服でいいかなあ……」
「いつもの新さんでいいと思うよ」
『ピンポーン』ついにその時が来てしまった。
窓から外を見ると品の良い白い外車が止まっている。
玄関を開けるとグレーのジャケットを着た、髪に少し白さが混じった紳士が立っている。
「こんにちは、綾乃の
「は、初めまして橋口新です、ようこそお越しくださいました」油の切れたロボットのようにぎこちない挨拶をする。
「パパようこそ天空の別荘へ、道が分かりずらくなかった?」
「大丈夫だよ、ナビがあるからね」
「上がって」綾乃さんはリビングへ案内した。
「思ったよりも中は広いんだね」そういって室内を見渡している。
「おやっ!」将暉さんは本棚の前で立ち止まった。
「パパ分かるの?」
「ああ、昔渉君と麻里奈さんが結婚した当時、マンションに呼ばれたことがあってね、『父が結婚祝いに作ってくれたんです』そう言ってた。
あの本棚はどこへ行ったんだろうと気になってたんだがここにあったんだねえ」
「そう、新さんがこの本棚は何か気になったらしくて捨てずにいてくれたの」
「そうか、良かったね残っていて、新君ありがとう」
「いえ、何か大切そうに見えたので……」
「はいパパ、コーヒー」リビングのテーブルに置いた。
「このリビングはパソコンがやたらに多いねえ」ゆっくりと見渡す。
「はい、僕の仕事場ですので」
「何の仕事をしてるんだい?」
「僕はエンジニアなので、パソコンのプログラムを作ったり、そのプログラムを使っていろんな仕事をしています。
今は企業の経営診断のプログラムを作っていて会社の健康診断を調べるような仕事をしています」
「そうなんだ、難しそうだね」
「そうなの、新さんってとっても頭いいのよ」
「いいえ、そんなことはないです、ただコンピュータをいじるのが好きなだけです」頭をかく。
「君が綾乃に私としっかり話すように言ってくれたんだってね」
「はい……」
「どうしてそう思ったんだい?」
「そうですね……綾乃さんやお母さんとの話を聞いた感じではあなたは優しい人だと思いました。それに血のつながらない綾乃さんに会社も託したい、そんな思いを聞いて、本当に綾乃さんを大切に思っていることを感じました。ですからしっかりと話し合えば上手くいくような気がしたんです」
「そうか、おかげで綾乃としっかり話し合えて本当に良かったと思ってる、ありがとう」
「いいえ、何もよく分かってないのに口を出してすみませんでした」僕はゆっくりと頭を下げる。
「ねえパパ、新さんっていい人でしょう?」
「そうだね、少し安心したよ」すこしだけ微笑んだ。
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