第47話 しあわせの味をつなげて
別荘へ帰ると綾乃さんはスマホをポケットから取り出した。
「早速パパに報告しなきゃ」
「ちょっと待ってよ、お父さんに報告するのは、まだ心の準備が間に合っていないんですけど……」
「そう……じゃあ別荘に遊びに来てもいいよって言っていい?」
「うーん、……まあいいですけど……」微妙に眉を寄せる。
「だって新さんは一分一秒も無駄にしないで幸せにしてくれるんでしょう?」また小悪魔がひょっこりと顔を出す。
「なんか言うと、言った言葉が人質のように捕えられて僕を締め付けてきます、綾乃さんは怖い人ですね……」あきらめ顔でテーブルにうつ伏せた。
「もしもしパパ、別荘に遊びに来ていいよ、うん、大丈夫……じゃあ待ってるね……お土産は別にいいよ……」電話を終えた。
「新さん、水曜の午後に来るって」
「そんな直ぐに来るの」僕は慌てた。
「大丈夫よ、ちょっと見に来るだけだから」気にもしていないようだ。
僕は椅子にもたれ天井を見ながらうなった。「一体どうなるんだろう…………」
夕食はとても豪華だった。ビーフシチューをメインにサラダやスープ、デザートなど、まるでレストランのようだ。
「すごい、こんな豪華な洋食も作れるんだね」
「これはママに教わったの、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが高崎でやってたレストランの人気メニューよ」
「そうなんだ、きっと綾乃ちゃんのお父さんも食べたんだろうね?」
「うん、大好きなメニューだったってママが言ってたわ」
「そんなメニューを僕に作ってくれたんだ」
「だって初めて出来た恋人さんですからねえ、大切にしなきゃ」
「綾乃さん……」僕は目がしらが熱くなってしまう。
「いただきまーす」綾乃さんが先に手を合わせた。
「いただきまーす」僕も手を合わせて深く頭を下げると、嬉しそうに食べ始める。
「すっごく美味しいよ、お家でこんなご飯が食べられるなんて幸せだなあ……」
「ホント、じゃあ私を大切にした方がいいよ」いたずらっぽい目をして微笑んだ。
「はい、一分一秒大切に幸せになるように頑張ります!」口にいっぱい詰め込んだまま誓った。
デザートを食べながら、満足そうに綾乃さんを見ていると寄り添ってきた。
「新さん幸せ?」
「はい、僕はたいして何もできないかもしれません、でも綾乃さんとお母さんの約束が守れて幸せになるように努力してみます」
「ありがとう、もうすでに幸せよ」そう言うと目を閉じた。
僕は真っ赤な顔をして綾乃さんのほほへ軽くキスをした。
綾乃さんは片目を開けると少し不服そうに僕を見ている。
小さくなっている僕に微笑むと、「今日のところはこれで勘弁しましょう」そう言って抱きついてきた。僕の身体中の血液が沸騰している。今熱を測ったら凄いだろうと思った。
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