第38話 2・75角関係

その夜は鍋料理だった、僕はおかわりをして食べた。


「やっぱり綾乃さんの料理は最高に美味しいよ」


「そう、胃袋つかまれた?」


「はい、完全に」


「正直でよろしい」綾乃さんは満足した顔でお風呂へ下りて行った。


 待っていたようにポケキャバが呼んでいる。


『げんき?』


『元気だけど彼女がまた来た』


『何それ、もしかしてポンちゃんだまされてない?』


『それはないと思う』


『何しに来たの?』


『近くの山のカフェでバイトするんだって』


『そこに泊まって?』


『うん』


『もしかして二人は付き合ってるの?』


『それはないけど……』


『だったら追い返してもいいんじゃない?』


『でも前の別荘の持ち主だったお祖父ちゃんが来ることを楽しみにしてて、集落の人達も歓迎しているから無理には追い出せない』


『そうなんだ、でもポンちゃんのやさしさに甘えてる気がする』


『もう少し様子を見てみるよ』


『そう、心を持っていかれないように注意してね』


『はい分かりました』


「会ったこともこともしゃべったことも無いけど恋人気どりなんだよね……」僕は少しだけわらってスマホを置いた。


綾乃さんが可愛らしいパジャマで上がって来る。


体の線がくっきり出るような生地なので、綾乃さんのスタイルの良さが際立つ。僕は目のやり場に困って眉間にしわを寄せて固まった。


「どう、似合う」近づいてくるりと回った。


「はい似合いますけど、僕には刺激が強すぎてこまります」


「えっ、どこも透けてないでしょう?」あらためて自分の体を確認するようにみている。


「美人なのに、スタイルまでいいことがわかってしまいますから」恥ずかしそうに下を向く。


「そお……私スタイルはあまり自信ないんだ、しっかり出るところが出てボリュームがあるってわけじゃないから」


「十分すぎますよ」


「そう、こんな私でもいいかしら?」


「文句のつけどころがありません」


「本当に、うれしい、新さんってやさしいのね」にこにことすり寄って来る。


「僕はもう寝ます」リビングの布団へ避難した。


「おやすみなさい」綾乃さんはあまえたような瞳をしたが、和室へ入り障子をゆっくり閉めた。

布団は気持ちいいのだが、何故か眠れずに何度も寝返りをうった。

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