第33話 言葉の森
別荘へ帰ってきて考えた、おそらくあの押し入れのお金は社長代理という人が持ってきたものだろう。そして引っ越して来た時に外車で来たあの怖そうな人が社長代理なのだろうか?あんな人を雇っている会社ってどんな会社だろう、ちょっと怖い会社かもしれない。
少し不安になった、でもいろんな話から考えるとそんなに悪い人には思えないんだが……。その夜綾乃さんは帰ってこなかった。
『最近忙しそうだね』ポケキャバからメッセージが届く。
『そうなんだ、地域のお祭りがあったり色々大変だった』
『そう、元気ならいいんだ』
僕は後ろめたい気持ちに耐え切れず、ついに話した。
『じつは前の別荘の持ち主のお孫さんが訪ねて来た』
『いくつくらいの人?』
『二十歳ぐらいだと思う』
『女の人?』
『うん、女の人』
『綺麗な人?』
『うん』
『もしかして泊めたの?』
『風邪をひいてここで倒れたからとりあえず看病した』
『そう、優しいのね』
『まあ山里のこんな場所だからほっとくわけにもいかなくて』
『私が最初にそこの別荘へ行きたかった』
『春になったらおいでよ』
『絶対よ!約束よ!……もしかしてまだそこにいるの?』
『いや、家に帰ったよ』
『そう、何もなかったんでしょうね』
『なんかあるわけないじゃないか』
『よかった、私以外に浮気しちゃあダメよ』
『はいはい』
『じゃあ浮気防止にサービスショット』
心結のアバターの水着姿が表示され、しばらくして消える。僕はどんな人が向こうにいるんだろうと思った。でも本人と会うことはきっと無いんだろうな…………
外でフクロウは『ホー』っと鳴いた。
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