第26話 恋の羅針盤が動き出す

夕食はそのまま宴会と発展した。


「ねえ新さん、初恋の人ってどんな人?」


「なんでそんなことを聞くんですか」


「だって知りたいもん、教えろ……教えろ……」肩をぶつけてきた。


「綾乃さんってもしかして酒癖わるい方?」


「そんなことないもん、初恋の相手のこと教えろ!……」


「うーん……近所の知美ちゃんって子、目がぱっちりした可愛い子だった」


「そうなのか、新さんは可愛い子が好みなんだね……知美ちゃんて私に少し似てない?」


「ぜんぜん似てない」


「そう、つまんない」唇を尖らせている。


「綾乃さんの方がぜんぜん美人です」


「そう!そうなの!……じゃあ知美ちゃんより気に入ってくれる?」一瞬にニヤけた。


「それはどうだろう、美人はハードルがぐんと上がるからなあ」僕は素知らぬ顔をする。


「え〜……なんでハードルを上げるの?」


「そりゃあ美人だと緊張して話せなくなるし……」


「でも新さんは私にはもう緊張してないでしょう?」


「そんなことないよ、毎日緊張して心臓が破裂しそうです」


「嘘つきー……余裕たっぷりに見えますけどお……」


「残念ながら余裕はありませーん」


「もしかして、心に決めた人がいたりして」


「それもありませーん」


「それなら少し安心ですね」少し微笑んでいる。


僕は眠くなりやがてフラフラし始めた。


「おやすみ、色々とありがとね」綾乃さんはそう言って和室へと入って行った。

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