第14話 三角関係?いや2・5角関係
「そうだ、かぜ薬飲んでください」そういって薬を箱ごと渡す。
「新さん優しいんですね」そう言ってにこやかに受け取った。
「洗濯とかは下の階に小さいけど洗濯機や乾燥機があるので使ってください、お風呂は水の出があまりよくないのでしっかり浴槽にためてから入ってください」生活に必要な情報で思い当たることを綾乃さんに伝える。
「ありがとうございます、色々と考えてくださって感謝します」
「こちらこそおいしいご飯が食べられて感謝します」目じりを下げながら答えた。
綾乃さんはバッグを抱えて下の階へ下りて行く。
『ピロリーン』とスマホが呼んでいる。ポケキャバからのメッセージが表示された。
『カゼはよくなったの?心配してたんだよ心結は』
『ありがとう、なんとか回復してるように思う』
『ちゃんと食事した?』
『うん、卵を食べた』
『じゃあ、今日も無理しないでゆっくり休んでね』
『ありがとう』
僕は嘘をついていることに気まずい思いをしている。
しかし今、この状況を説明することは困難に思えた。
思わず東京の方角に向かって手を合わせ「ごめん」そうつぶやく。
1時間程経つと綾乃さんが階段を上がって来た。
ワンピース姿でリビングへやってきた彼女を見て僕はドキッとしてしまう。
お風呂上がりの綺麗な長めの黒髪、色白でほっそりとした体だ。
少しほてった小さい顔は化粧もしていないのに目はパッチリとまつ毛も長い。
小さい唇は綺麗なピンクで柔らかそうに微笑んでいる。
僕の体の隅々まで静電気が走り、驚きで呆然と立ち尽くす。
「どうしたんですか新さん?」荷物を抱えて和室にもどりながら立ちすくむ僕を不思議そうに見ている。
女性の前では緊張して固まってしまうことをすっかり忘れていたのだ、美しい女性ならなおさらだ。
ぎこちなくやっとテーブルにたどり着いた。綾乃さんもリビングにやってくると僕の前へ座った。
「私もコーヒーいただいていいですか?」
「は、はい、やり方分かりますか?」
「分かりまーす」
コーヒーを入れてテーブルに戻ってくると、緊張している僕を見てくびをかしげている。
「どうしたんですか新さん」
「どうせすぐにバレるので言ってしまいますけど、僕は女の人の前では緊張してしまうんです、美人なら尚更です」
「えっ、今さらそんなことをいうんですか?」綾乃さんは、また長いまつ毛を何度も揺らして僕を見ている。
「これまで綾乃さんのカゼやいろんなことがあったので忘れていました、でも今綾乃さんが美人だってことに気が付いてしまったんです。項垂れて握った拳を見つめる。
「やだー!!冗談はやめて〜」綾乃さんは笑い転げた。
僕は真っ赤な顔になり、隠すようにテーブルにうつぶせた。
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