第13話 未来はいつもミステリー
二人の奇妙な同棲生活が始まる。
午後からはパソコンのデータ入力を教えると、綾乃さんはすぐにできるようになった。後は淡々と進めるだけだ。
綾乃さんは自分の居場所を見つけたように穏やかな表情で作業を進めている。
夕方になり食事のことを考えていると綾乃さんが声をかけて来た。
「あのう、私夕食を作りましょうか?」
「本当ですか!それはすごくありがたいです」何度もコクコクとうなずく。
綾乃さんをキッチンへ案内し一通り説明する。
「まだ来たばかりなので、食品のストックもあまり無くてここにあるだけです」
「そうですか」しばらく考えて「大丈夫です」そういって食事の支度にとりかかった。
僕は残りの仕事をかたづける。しばらくするとキッチンからいい匂いがしてきた。
「できました」綾乃さんは料理をリビングのテーブルへと運んできた。
「野菜がキャベツしかなかったので、チョレギサラダ風にしてみました。卵があったのでオムレツを作りました。あとはお味噌汁ですが、インスタントをアレンジしました」
テーブルに並んだ料理はシンプルだが、自炊などほとんどできない僕には豪華に見える。
「お〜、凄い!おいしそうだ」僕は思わず言葉を漏らす。
綾乃さんはニッコリと微笑んでいる。
「いただきまーす!」僕はサラダを口へはこんだ。咀嚼すると大きく目を見開いて驚く。
「おいしい、キャベツってこんなにおいしかったっけ? お店で食べるような味だ!」
「そうですか?塩コショーとごま油だけですけど」不思議そうな顔をしている。
オムレツを一口食べた、ふんわりとした食感と卵の香りが広がり、食欲を大きく引き出してくれる。
「すごい、なんでこんな味付けができるんですか?」真剣に綾乃さんを見ると。
「そんな大げさな」ケラケラと笑っている。
次に味噌汁を飲んだ、さすがにインスタントはどうにもならないだろうと思ったが、自分で作ったときとは全く違ってとても上品になっている。
「インスタントだよね………」一度箸をおいて考え込む。
「料理ってすごい!綾乃さんって料理の学校とか行ってたんですか?」
「いえ、母が料理好きで小さいころからいっぱい教えてもらいました」
「やっぱり料理にも才能が必要なんですね………」
僕はもう一度箸をとるとすごい勢いで食べた。
パックのご飯だったが、おかずがおいしいとご飯までおいしく感じる。
綾乃さんはそれを見てニコニコしながら一緒に食べている。
僕はあっという間に完食した。
「ごちそうさまでした」両手を合わせて丁寧におじぎした。
「よかった、少しは役に立ったみたいで」遅れて綾乃さんもごちそうさまと手を合わせた。
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