第11話 お目覚めの不味い朝食

朝になり和室の障子が開く音で目がさめる。

彼女は昨日とちがって顔色もよくなり、恥ずかしそうに出てくると僕を見ながら深々とおじぎをした。


「昨日はご迷惑をおかけしました、本当にありがとうございます」


「少しは元気になったみたいだね、よかった」寝袋から起き出してリビングのテーブルへ移動する。


「今コーヒー、いやお茶を入れますね」僕はキッチンへと向かう。


彼女は洗面所の場所を聞くと小さなバッグを持って階段を下りて行った。

不思議な気分だ。同じ屋根の下に若い女性がいるのは初めての経験なのだ、お茶を運ぶ手が少し震える。

お茶をテーブルに置き、階段を上がって来た彼女にすすめると、嬉しそうに向き合って座った。

僕は少しお茶を飲むと姿勢を正し「橋口新です」と自己紹介をした。

彼女は我に返ったような顔をして「神崎綾乃かんざきあやのです」そう言うと少しだけ微笑んだ。

その様子がなんかおかしくてクスクスと笑うと、彼女もつられて笑い出す。

リビングには穏やかな日常が降りて来た気がした。


「突然知らない人が訪ねてきて、しかも風邪で倒れるとかビックリしたでしょう?」


「はい、正直どうなることかと思いました」


「そんな状況なのに親切にしていただいてとっても感謝しています」


「当然のことをしただけです、困った人を目の前にして、もし自分が何か出来るのであればするべきだと思います」


その言葉を聞くと彼女は不思議そうな顔をしてゆっくりうなずいた。


「新さんってとっても優しい人なんですね」


僕は恥ずかしくなって「あの……朝ごはんを用意します」あわててキッチンへとにげ出した。


しばらくしてハムエッグとパックのごはん、インスタントの味噌汁を用意しリビングのテーブルへ戻ってきた。


「すみません、引っ越したばっかりでこんなものしかできません」言い訳しながらテーブルに並べる。


「ありがとうございます、十分です」彼女は嬉しそうに笑みをうかべている。


とても美味しいとは言えない朝食だったが、二人はなんとかお腹を満たした。

食後に彼女へかぜ薬をさし出し、自分はコーヒーを飲む。

少しだけ打ち解けた気がした僕は、疑問に思ったことを聞いてみた。


「あのう、神崎さんって言いましたよね、お祖父さんは相原さんだから母方のお祖父さんですか?」


彼女は大きめに瞬きすると、思いきったように話し出した。

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