第10話 一泊二日の看病

三時間ほど経つと彼女はゆっくりとまぶたを開く。一瞬どこにいるのかと瞳だけがゆらゆらと動く。横に座っている僕を見て先ほどの事を思い出したようだ。


「私どうしたんでしょう?」彼女は上半身を起こす。


「ここへお祖父さんを探しに来られたようでしたが、倒れてしまったのでここに寝ていただきました」


「なんとなく思い出しました、ごめんなさい迷惑をかけてしまって……」


「もうバスもないし、まだ動くのは無理だと思います、とりあえず風邪薬を飲んでもう少し寝てください」


「本当にいいんですか?」彼女は力なく答えた。


「症状はどんな感じですか?」


「頭が痛くて寒気がします」


「分かりました、少し横になって待っていてください」キッチンへ行くと瑠美さんのメモで買ったお粥のパックをレンジで温める。症状に合いそうなかぜ薬と水をお粥と一緒に持って来た。


「お粥を食べて薬を飲んでください、今は何も考えないでカゼを治すことだけ考えましょう」少し微笑んで彼女を見る。


「ありがとうございます」軽く会釈をして指示に従った。


お粥を少し食べると「美味しいです」そう言って頭をペコリと下げた。

なんとか食べ終わせた彼女は、水でかぜ薬を飲んだ。


「僕は隣のリビングにいるので何かあったら声をかけてください」そう伝えると和室の障子を閉める。

僕はリビングの端にある3畳の畳の上に寝袋を出して広げ、そのまま上に横になった。


「ピロリーン」とスマホが呼んでいる。


『大丈夫?元気?』心結からの言葉が届く。


『今夜は風邪気味なので寝ます』それだけ返信して寝袋に入り込む。


和室からはスースーと寝息がかすかに聞こえている。

僕はまどろみとめい想を交互にくり返すようにして一夜を過ごした。

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