第7話 事件は突然に

押し入れの買い置きがどれくらい有るのかと思い、確認していると奥に小さな紙箱が二つあることに気が付く。

何だろうと思い少しだけ大きい方を開けてみた。一殺のアルバムと数十枚の写真が入っている。中を見るのはプライバシーの侵害のような気がして箱のフタを閉じる。そのうちに妹さんと連絡が取れたら渡そうと思った。

 

もう一つ小さめの箱を開けると新聞紙にくるまれた物が入っている。恐る恐る新聞紙を開いて中身を確認する………!……慌ててもとに戻した。


「嘘だろう……」


もう一度呼吸を整え、ゆっくり新聞紙を広げた。中には帯のついた綺麗な一万円札が入っている、厚みからして一千万程有るようだ。

僕はつばをごくりと飲み込む。そしてしばらく呼吸するのを忘れる。


「どうしよう……」その紙箱を前にして途方に暮れた。


しばら時間が経ち、少しだけ自分を取り戻す。


「とりあえず見なかったことにしよう」思わず独り言が漏れる。


しばらく室内をうろついて思案にすると背中に嫌な汗をかいた。

本棚の写真立てを持ってくるとアルバムの箱に入れ二つの箱を元の場所に戻した。


「後でゆっくり考えよう!」今の僕にはそれしか思いつかなかったのだ。

 

 夜になっても落ち着かなくてポケキャバに会話を申し込む。


『どうしたの?』


『外で何か知らない鳴き声やガサガサと音がして眠れない』など、どうでもいい話をした。

気をまぎらわすために、初めてボトルキープをしてみる。一万円のワインをキープしてみた。どうやらこれで一時間会話のし放題らしい。

話題に乏しい僕は、コンパに連れていかれ「暗い」とか「空気が読めない」とか散々な目にあったことなどを話す。すると心結も色々と自分のことを話してくれた。

高校になって反抗期になり遊びまわったこと、そして食生活などが激変してアレルギーになったこと、そのせいで肌がカサカサになり、いじめにあって今引きこもっていることなどを話してくれた。

本来はプライベートなことは話してはいけない規則らしいが、少しでも僕の寂しさを和らげてあげたいと思ったようだ。


「優しい子なんだなあ…………」心の中で呟く。


そんな心結に距離も時間も超えて響きあう気がした。


一時間はあっという間に過ぎた。二人はすっかり打ち解けたような気がする。どこまで真実の話かは分からないが、そんなことはどうでもよかった。

言葉の森で語り合い、心を落ち着かされたことが救いだ。


「愛なんてなくてもいいか…………」


田舎暮らしはまだ始まったばかりなのに、独り言が多くなったような気がしてクスリと自分を笑った。

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