第5話 ポケキャバ
二人は日帰り温泉を出て別荘へ戻ってくる。
スーパーで買いこんだお酒やつまみ、総菜を並べて宴会が始まった。
「「カンパーイ」」缶入りのハイボールはぶつけると鈍い音がした。
「先輩、本当に助かりました、1人ではどうにもならなかったので」
「だろう、だから今後も仕事のサポートは頼むぜ」
「分かってますよ、色々と感謝してますから」
「でも、やっぱり新が近くにいないと思うと寂しいな」お酒をぐっと飲みほした。
「大丈夫ですよ、すぐにネットが繋がってモニターで顔を見ながら話せますから」
「そうだな……でもここはやっぱり遠いぜ」
「必要な時はいつでも東京まで行きますから」僕もお酒をグッと飲んだ。
「ピロリーン」スマホが呼んでいる。
「なんだ、またキャバクラの女の子か?」
「ポケキャバですよ」僕はスマホを見る。
『無事に別荘に着いた?』
『うん、先輩と引っ越し祝い中』
『飲みすぎちゃだめよ』
『了解』
「なんだよ、結局寂しいんじゃん」
「寂しくないとはいいませんが、このポケキャバで十分ですよ」力無く笑った。
「
「たぶん若い女の子だと思いますよ、会話の感じだと……」
「会話といっても文字だけだろう?メールと同じだよね、しかも1回のやり取りが何円だっけ?」
「100円です」
「寂しくて一晩メール、いや会話したら結構な金額になるんじゃないのか?」
「大丈夫ですよ、1日1000円までと決めてますから」
「ボトルキープとかもあんのかよ」
「ええ、キープしたら1時間会話し放題です、サービスショットもついてくるらしいですよ」
「えっ、どんなやつ、見たい」先輩は一瞬目を輝かせる。
「僕はボトルキープとかしませんからサービスショットは見たことないですね」
「なんだ知らないのかよ、つまんねーな」
「生身の付き合いより気が楽で良いですよ」
「いや〜、俺は絶対に生身の方がいい!」
夜も更けて二人はすっかり酔ってきた。外ではフクロウが「ホーッ」と鳴いている。
先輩は持ってきた寝袋を二つ出している。
「寝袋の一つは瑠美の分だから、ここに置いとくな」
「えっ、瑠美さんの分?」
「そうだよ、お前のことが心配だから今度二人で様子を見に来ようって言ってるんだ、感謝しろよ!」
「はあ……」
「そん時はベランダでバーベキューしようぜ、下には日帰り温泉もあるしな」
「先輩、ここをホテル代わりにしようと思ってません?」僕は少し眉を寄せる。
「何言ってんだよ、お前のことが心配だからだろう、もう今夜は寝ようぜ」先輩は寝袋に潜り込み、手だけを出すとヒラヒラと振った。
僕も寝袋を出して潜り込み眠りにつこうとしている。
窓の外からささやくように小川の流れる音がした。
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