第2話 冷たい関係
「おっ、有名なかき氷屋さんだ!」今度は先輩が、かき氷屋の看板に気が付いたようだ。
「イラついたからさ、お前のおごりでかき氷食っていこうぜ!」
「いいですよ、勿論おごります」
「よっしゃ!」先輩は子供のような、罪のない顔をして喜んでいる。
「……………… 」この人懐っこい笑顔は自分にないので、うらやましく思った。
「先輩、そこの左側に駐車場があるみたいですよ」見えるようにワザたらしく目の前で指を差す。先輩はハンドルを回すと駐車場へと入った。
ワゴン車を駐車場に止めた二人は、店の前へ来ると長い行列におどろいた。
「えー、夏も終わって久しいというのにまだこんな行列なんだ?」
「びっくりですね」諦めて仕方なく行列の最後部へと並ぶ。
僕は飲食店で並ぶのは嫌いなタイプの人間だと自覚している。
先輩はそれ程嫌では無さそうだが……
「実は2年位前だったかな?お盆休みに彼女と来たときは、行列が長すぎて食べるのをあきらめたんだ」
「
「いや、瑠美の友だち」
「えっ、瑠美さんの友人が元カノだったんですか?」
「ああ、とってもノリのいい子でね、でもお互いにノリがいいと熱くなるのも早いが覚めるのも早いってわけさ、ハハハ……」先輩は何気ない出来事のように話した。
「よくそのあと瑠美さんがつき合うことを了承しましたね?」
「あいつはしっかりと本質を見るやつだからな」
「本質ですか…………」
「瑠美が言ってたけど、俺とお前の性格は足して2で割ると丁度いいらしいぞ」
「なるほど、それは正解かもしれないですね」なんと無く頷く。
確かに僕と先輩は陰と陽、もしくは静と動、明らかに対照的だ。瑠美さんは本質を見抜いているのかもしれないと思った。
やっと順番が来た二人は、思い思いに注文すると運ばれてきたかき氷を、カサコソとスプーンで削りながら食べ初める。冷たさと甘さが喉の奥からスーッと染みていった。
「都落ちか……」ボソッともらしてしまう。
「なんだよ、もしかしてお前、根に持ってんのか?」
「そんなことはないですよ」
「俺はお前に東京に留まってほしくて、都落ちなんて言ったんだがな」
「分かってますよ、だた初めての場所にきて少し不安になっただけなんです」
「だろうな……今からでも東京に戻るか?」
「大丈夫です、どうせすぐに慣れるしネットでもすぐに繋がりますから」
「そうだな、そんな時代だもんな」
「そういえばここは天然氷で有名なんですけど、天然氷のかき氷は頭にキーンとこないらしいですよ」
「なるほど、別にキーンとはなって無いな」
「ゆっくり食べたからですかね?」
「さあ……でも美味しかったなあ」
先輩は溶けて残った色のついた液体を一挙に飲み干した。
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