バブみ道日丿宮組

お題:消えた潮風 制限時間:15分

 海は閉鎖されてる。海岸に出る道すべてにバリケードがしかれ、通るには免許証が必要。ボクらは海というのを映画や、図鑑でしかない。

 潮風の匂いというのも魚に似てるぐらいしか認識してない。

 これもすべて戦争の時代、核を作った国が崩壊したのが原因だ。きれいにするのは科学者の目標とされ、テレビでいろんな話がでてる。それの加えて現地に出た人の死亡報告も毎度目にする。

 そこに一体なにがあったのかを話せる人間はいない。

 帰ってこれない場所ーーそれが海。

「飛べる鳥か……」

「鳥は飛ばないでしょ? あー鳥園の中なら飛んでたっけ?」

 帰り道、いつもと変わらない話をする。

 バリケードも依然として高い壁で威圧してくる。

「昔はたくさんいたみたいだよ」

「鳥園でもたくさんいるけど?」

「その数倍はいたんだよ。今残ってるのは免れただけ」

 渡り鳥っていう不思議な鳥だっていた。

「養殖されてない自然の鳥が海の魚を食べてたんだ」

「ふーん、不思議な感じ。ほんとだったらそれを私たちも食べてたんだよね?」

 うんと頷き、匂いをかぐ。それを友人は不思議に思ったので、

「潮の香りが海の近くならするはずなんだけどね」

 首を傾げた。

「つまりこのバリケードは海の近くにないってこと?」

「うん、鼻につく匂いならしないのはへんじゃない。ゴミ置き場の周りは臭うでしょ」

「海って広いものね。ゴミの何百、何千倍もあるなら近くに置かれたバリケードは潮風にまかれる」

 友人はゆっくりとバリケードに手をあてる。

「いったいいつからこれあるんだろうね。お母さんたちもバリケードの向こうがどうなってるかわからないっていうし」

「少なくとも100年は経ってるよ」

 本にはそう書いてあった。

 今では住めるようになった場所も被爆地として立入禁止だったとか。

「じゃぁ私たちが大人になっても見れないね」

「科学者か研究者になれば、見れないこともないよ」

 タメ息が聞こえた。

 顔色が見えないけど、きっと呆れてる。

「死ぬってのがわかっててバリケードの向こうにいくのはおかしいよ」

「でも夢があるでしょ? 海って言葉に」

「そうかもだけどさ……」

 そんな日常会話をボクたちは家に帰るまで続けた。

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バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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