第45話 加隈図屏風⑦
「ちなみになんですけど、なんで今日は履いてるんですか?」
「別に……だってそれが普通じゃない」
「けど、天王洲さんは履いてない人じゃないですか?」
「し、失礼ね……! 私だって履いてる時くらいあるのよ……! それに西宮くんだって履いてくださいって言うじゃない」
「それは照れ隠しで、本当は履いてない方が興奮するんですよ」
「折角のデートなのに、何を言っているのよ……」
最初は確かに履いて欲しいとは思ってたけど、それは昔の話だ。今は断然履いてない方が嬉しい。ほら、押すな押すなは押せ的なアレですよ。
「それが天王洲さんらしさなら、そのまま突き通すべきです」
「西宮くん、本当に何を言っているのかしら……?」
「俺はどんな天王洲さんでも、受け入れますし好きになりますよ。自信しかありませんよ」
「う、嬉しいけど複雑なこの気持ちはなんなのかしら……」
天王洲さんは顔を赤らめて、だけど頭を抱えて悩んでいるようだった。そんなにマズイ事は言ってないと思うけどな。けど、ここでそんな話をしているのは、確かに本来の目的とは違うのも確かだった。
「とりあえず行きましょうか」
「ええ」
「映画までは時間ありますし、2人でブラブラでもしますか」
「ふ、2人でラブラブ……? いきなり何を言うのよ西宮くんは……!?」
「そのセリフ、こっちが使うべきセリフなんですが?」
天王洲さんは時たま天然が出る。まぁ、そこが可愛いポイントの一部でもあるんだけどね。俺よりよっぽど天王洲さんの方が邪な気がしてるのは俺だけなのだろうか。
「あ、中也だ!」
「え?」
「え?」
俺の名前を呼んだ少女の事を俺は知っていた。見知った少女で、その少女は金髪碧眼美少女だった。そう、リタ・セスクアリスだった。
「り、リタ。なんでここに……?」
「買い物だヨー! 中也はなんでここに?」
「天王洲さんとデート中なんだよ」
「でぇと? あぁ、そっかそっかぁ」
するとリタは、天王洲さんの方へと向かっていく。
「久しぶりだね、天王洲さん!」
「久しぶりね、リタさん」
「今日は中也とでぇとなんだね。私もしたけど、楽しかったな〜!」
「そう、良い思い出なのね」
「うん! 中也の初めては私が貰っちゃったからネ〜!」
「何が言いたいのかしら?」
「べっつに〜」
薔薇色だと思ったデートは、ピンク色だったと思った雰囲気は一気に漆黒に染まっていく。リタは天王洲さんを挑発してるし、天王洲さんはそれにピリついてるしで、この空気は耐えられそうになかった。
「り、リタ……! さっきも言ったように、これから天王洲さんとデートだからさ、またね」
「うん、またね! 中也っ!」
リタを遠ざけとようとそう言った。別れの言葉を切り出して窮地を脱出しようと思った矢先に、リタが俺の頬へとキスをしてきた。少し背伸びをして、頬に軽くちゅって感じで。
「り、リタ!?」
「ふふふ、天王洲さんも、またねっ」
リタは別れ際に、とんでもない爆弾を投下して去っていった。俺は気まずさが半端ないし、天王洲さんの方を見ようとしても、オーラがもう怖すぎてまともに見てられなかった。
デートが始まって……いや、まだ全然始まってもないのにある意味終わろうとしていた。
————————————————————
《令和コソコソ噂話》
第45話読了してくださりありがとうございました!
久しぶり過ぎて設定把握の為に自分で読み返したりしてたら更新遅くなっちゃいました……
書き続けるって本当に大変ですよね……
今後の励みにもなっていますので、お気に入り登録、感想と★評価やレビューをよろしくお願いします……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます