第44話 加隈図屏風⑥

 今日は念願の天王洲さんとの映画デートの日。

 髪型セットして服装もオシャレに着こなして、香水なんかも少し付けちゃった。あらやだ俺ってオトナじゃん? 父さんのグラサンでも付けていこうかな。


「今日の俺、バッチリじゃね?」


 謙虚は美徳かもしれないけど、自信を持つ事も大事だ。根拠のない自信だって時には必要だと思うし。ソースは特に無いけどね。


「とりあえずアイツだけには負けたくないからな」


 小日向の、ライバルの登場が俺を変えた。

 天王洲さん、天王洲愛瑠は金持ちの令嬢の娘だ。一般人の俺なんかとは釣り合わないくらい敷居の高い存在なのは間違い無い。けど、それでも今はお慈悲で絡ませて貰えてるし、あまつさえ口説かせても貰ってる。だったら、せめて天王洲さんに見合うように、隣に立っていられるような服装で、態度じゃなきゃいけない。


 何も持っていないからこそ、自分で考えて行動するしかないんだ。


 そんな気合いを入れたせいか、天王洲さんとのデートが楽しみだったせいか、待ち合わせ時間の二十分前に到着してしまった。気が早過ぎるとも最初は思ったが、その矢先に俺の視界に入ってきたのは天王洲さんだった。


「え?」

「に……西宮くん」

「えっと、随分早いですね?」

「べ、別にこれは今日が楽しみだったとか、ソワソワしちゃって待ち合わせ時間に早く来ちゃったとかそんな理由じゃないのよ……? これはそう……たまたま。たまたまなのよ」

「あ、はい」

「それに、に……西宮くんだって早いじゃない……!」

「そりゃ、天王洲さんとのデートだったんで、ウキウキして早く来ちゃいましたよ!」

「…………」

「え?」


 天王洲さんは顔を真っ赤にしたと思ったら、両手で自分の顔を覆ってしゃがみ込んでしまった。え? 俺なんかマズい事言ったかな? 楽しみにしてたとか重かった? 俺のこの気持ち重かったですか!?


「あの……天王洲さん……?」

「ず……ズルいわ……」

「え?」

「卑怯よ……! どうした西宮くんはそう……軽々しくと……!」

「いや、楽しみに軽々しいも何も無いと思うんですけど……?」

「気持ちは嬉しいけれど、時と場合は考えてちょうだい!」

「タイミング的には完璧だったと思うんですが!? むしろこれが正攻法の口説きじゃないんですか!?」


 心に決めたわけじゃないけど、口説くと決めた相手が天王洲さん。そんな天王洲さんに、最近全然口説いてくれないと言われてしまったから、挽回したい気持ちも当然ある。あ、大紅蓮なんちゃらとかじゃなくてね。


「それは……そう……かも……」


 あ、可愛い。顔赤らめてるし、なんか両の手の人差し指の先端を付けたり離したりしてるの可愛い。あーもう天王洲愛瑠って可愛いな。可愛いは正義だな。今俺可愛いって何回言った? いや、もう最高に可愛いなおい。


「口説かれるのも……大変ね……」

「天王洲さんの気の持ちようなんじゃ?」

「経験が無いのだから……しょうがないじゃない」

「なら、俺でたくさん経験して、少しずつ慣らしてくださいよ」

「な、なんの経験よ……! ま、まだ早いわよ……! 破廉恥だわ……!」

「口説くですよ口説く! 早いのは天王洲さんの思考じゃないですか!? なんで急にピンク色なんですか!?」

「なんで今下着の色を……」

「え? 今日は履いてるんですか?」

「はっ……も、もう知らない……!」


 天王洲愛瑠は最高に可愛かった。

 それと、今日はちゃんとパンツを履いていて、ちなみに色はピンク色だそうです。




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《令和コソコソ噂話》


 第44話読了してくださりありがとうございました!

 念願のデート当日になりましたー! 天王洲さんの可愛さ、魅力を存分に表現できたらと思います!


 引き続きたくさんのお気に入り登録、★評価もありがとうございます! 過去作品を超えた評価、とても嬉しいです!


 今後の励みにもなっていますので、お気に入り登録、感想と★評価やレビューをよろしくお願いします……!

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