第40話 加隈図屏風②


 瑞樹が俺にKissをしてきた。


 ご褒美と瑞樹は言っていたが、その対価がKissだとは到底思えないし、リタにしろ瑞樹にしろ、自分の唇を安く売り過ぎてませんか……? 君ら美少女から貰えるKissってそんな簡単に手に入らないと思うんですけど……?


「何か不満そうな表情だね」

「不満とゆーか……そんな簡単に人とKissをするもんじゃないってゆーかさ……」

「簡単じゃないよ。僕は中也だからKissしてもいいと思ったんだよ」

「そ、それでもだから……!」


 リタは俺に好意を持っているからアレだけど、瑞樹は俺に好意を抱いているかは分からない。興味があるとは言ってるにしても、それは興味心で恋心ではないだろうから。


「それにしても、お二人さんは明るい内からお盛んだね〜。オレ、出てった方が良かったかね〜」

「え?」

結衣ゆい、来たんだ。来ないかと思ってたよ」

「いやいやいや、呼んだの瑞樹でしょーに」


 俺と瑞樹の後ろに、知らない美少年? がいた。身長は170位あるだろうか。髪型は短髪で、口調からして若干のチャラさ? みたいなのが垣間見える。んな事よりも、俺と瑞樹のKissを見られてしまった事の方が問題で、恥ずかしさが一気に込み上げてくる。


「じゃあ、3人でビラ配りに行こっか」

「ちょと待ってちょと待って、瑞樹さん?」

「なにかな?」

「いいの!? 俺達Kissしたの見られてんだよ!? それに、説明が無いでしょ説明が!!!」

「結衣。僕の幼馴染だよ」

「どーも、小日向おびなた結衣ゆいでーす。まぁ、分かってると思うけどオレ、男だからね。そこんとこヨロシク〜! あ、気軽に結衣って呼んでくれて構わないかんね!」


 男子で結衣って名前は珍しいなと思いながらも、俺とKissをしたのを見られた件にはノータッチだった瑞樹に溜息を零した。


「いろいろ言いたい事はあるんだけどさ。とりあえずこのビラ、今から配りに行くの……?」

「そうだけど?」

「どこに配りに行くの?」

「駅前だよ」

「なんか瑞樹って、無鉄砲だよね」

「コイツ、昔からこうだから何言っても無駄だぜ。一度目ぇ付けられたら終わりだよ」

「えっと、結衣は今高校生?」

「高一だからあんたと同じだよ。それとさ、多少はあんたの事聞いてるけど、実際あんたって瑞樹とどんな関係なの? どこまでヤったワケ!?」

「Kissはもうしたし、お互いに下着は見たよね」

「瑞樹、事実だけどこの場においてはマジでシャレにならないからねそれ!?」


 普通に考えたらヤバいけど、それをヤバいと思ってない瑞樹のせいで振り回されてばっかりだった。結衣はめちゃくちゃ爆笑してるし、瑞樹は相変わらずの無表情だし。


「んじゃ、瑞樹とあんたは結構良い仲って事でオーケー? なら、話は早いかもね〜」

「なんの話?」

「天王洲さん、オレが貰おうかなって話」

「え……?」


 爽やかな笑顔を作りながら、結衣は、小日向はとんでもない事を口にしてきた。この場の、今までの会話の中で天王洲さんの名前は一回も出てこなかった。

 それなのに、その人の名前を出したって事は、彼は俺が天王洲さんを口説こうとしてる事を知っている。瑞樹から情報が漏れてるんだとは思うけど、それにしては相手が悪過ぎやしないだろうか?


 爽やかなイケメンな美少女と俺とで戦った所で、勝機なんて一切ないんじゃないだろうか?


「どうして、今の話の流れで……天王洲さんの名前が出てくるんだ?」

「いや〜、あんたが天王洲さんを狙ってるって風の噂で聞いたからさ。けど、瑞樹と良い雰囲気なんだったら、狙ってるってのはガセだったのかな〜なんてね」

「雑談はそれくらいにして、二人共行くよ」

「おっし、いっちょ行きますかー!」


 相変わらず爽やかにそう言って、瑞樹からビラの入った袋を受け取っていた。結衣が、小日向が何を考えているのかは分からない。分からないからこそ、恐怖が押し寄せてくる。






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《令和コソコソ噂話》


 第40話読了してくださりありがとうございました!


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 日間にはぼちぼち乗らなくなって悲しみです……


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