第33話 エロ名所三人美女⑤
他校の生徒であるはずの加隈瑞樹がやってきた。そして、大胆で爆弾な発言をした。
確かに俺は瑞樹の下着を見たけど、いやらしさとかは一切ない。雰囲気もクソも無かったし、俺と瑞樹との間にはやましい関係は一切無いんだ。
「天王洲さん……これは……」
「もう……知らない……」
「…………」
「もう知らないって。じゃあ行こう」
いや、今の発言を聞いてうん、そうだねってならないよね普通。瑞樹に手を引かれるけど、俺はそれを振り払った。
「一旦天王洲さんの話をさせてくれ。じゃないと信頼が無くなっちゃうから……!」
「もう……西宮くんなんて知らない……」
「それくらいの事で落ちる信頼なんて、元から無いと一緒じゃないかな?」
「え……」
瑞樹にそう言われて天王洲さんを見た。天王洲さんは相変わらず視線を逸らしていた。あ、これもう信頼無くなっちゃったんじゃない? 元から無かったのか? いや、どっちにしても俺、終了だった。
まぁ、振り返ってみれば天王洲さんの期待を裏切ってばかりだった気がするのも事実だ。天王洲さんを口説くと言っておきながら、俺は具体的に何にもしていない。デートの誘いだって天王洲さんからだし、チャンスは何回も与えてくれてたのに、それに応えられない俺が不甲斐ないだけだった。
「僕とだから行こう、中也」
「どちらにしても、今日は瑞樹とは一緒に帰れない」
「どうして?」
「先約がいるんだ」
「ふーん。意外とハッキリ意見言うじゃん」
「そりゃ、ね」
「じゃあ明日は一緒に帰ろう。それなら文句は無いでしょ?」
「それは……まぁ」
「じゃあ今日の所は帰るよ。あと、それから中也」
「ん?」
「今日の下着の色は赤だよ」
「は、はぁ……!?」
俺の耳元で俺にだけ聞こえるような声音で瑞樹が言ってきた。その報告になんの意味があるの? 俺を興奮させて懐柔しよって魂胆ですか? そんなんじゃ俺は簡単に懐柔なんかされないぞ。けど、赤って言われちゃったら想像しちゃうのは仕方ないよね……?
「じゃあまたね」
「待ちなさい、加隈さん」
「何?」
「私は、西宮くんを信頼しているわ」
「ん?」
「だから元から無いなんて事実はありえないわ。少しだけエッチで破廉恥な西宮くんだけど、私は西宮くんを信頼しているわ」
「中也はエッチで破廉恥なんだ。勉強になったよ、ありがとう」
そう言って瑞樹は帰っていった。唐突過ぎた出来事で、まず部外者である瑞樹の存在を指摘する者はいなかった。ただ俺を信頼しているしていない云々みたいな話になって、天王洲さんからありがたいお言葉を貰って終了。
「ありがとうございます、天王洲さん」
「別に感謝される言われは無いわ。西宮くんが私の近くで築いてきた物だから、感謝するなら昔の自分に感謝なさい」
「やっぱり天王洲さんは、優しいですね」
「信頼はしているわ。でも、それとこれとは別の問題よ?」
「え?」
「彼女との関係、それと最後に何を耳打ちされたの? 顔を真っ赤にしていたけれど、どんな言葉で口説かれたのかしら? 一文一句違わずに答えてちょうだい。いいわね、西宮くん?」
口元は笑ってるけど目が笑ってないマジモード。あの、生徒会の仕事まだ終わって無いんですけど? それでもこの問答続けますか? あ、続けますよね。これから俺の尋問が始まろうとしていた。
「さっきのは……言わないとダメですか?」
「言いなさい」
「あの……今日の下着の色の報告を……」
「下着の……報……告……」
みるみる内に顔色を瑞樹の下着の色と同じ色に染め上げている。別に一切誇張なんてしてないし、事実を言ったまでだ。
「西宮くんは……パンツが好きなの……?」
「え?」
「前にも私に何回か聞いてきたし……そんなにパンツが好きなの……かなって」
「好きってゆーか……まぁ……ちょっとした興味本意みたいな?」
「知りたい……?」
「私のパンツの色も、知りたい?」
知りたいか知りたくないかって言われたら、すんごい知りたいんだけどさ。けど、なんか天王洲さん焦ってないか? 瑞樹からはハプニング的に見ちゃっただけだし、報告されたのも一種のハプニングだし。俺はそんなんで女性に優劣なんて付けるわけじゃない。
「知りたいか知りたくないかの2択なら、知りたいです。でも、それを天王洲さんがしなかったからといって、俺の気持ちが離れる事はありませんから。焦らないでください。そんな焦って色仕掛けをしてくるくらいなら、見たくありません」
いつの日かのリタと天王洲さんが重なった。焦って色仕掛けをして、自分の清い春を売ろうとしている。そんなのは間違っている。
「西宮くんの事、分からないの」
「分からない?」
「私に何を求めて、何をして欲しくて、何を期待しているのかが」
「え?」
「私も西宮くんの事を知りたい……でも、分からない……西宮くんが何を考えているのか」
「俺は別に、天王洲さんから何か貰えるのを待っているわけじゃないですから」
「そんな中で、いろんな女の子が西宮くんの周りに居るから……余計に……その……」
「俺の心は、あの時からずっと天王洲さんに向いてますよ。信頼してくれてるってだけで、俺はすごい嬉しかったですよ」
「そう……」
「だから、ありがとうございます。俺を信頼してくれてて」
「白……」
「はい?」
「白よ」
「え?」
「今日だけは……特別」
天王洲さんの今日の下着は、どうやら白らしいです。
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