第21話 心酔琵琶湖⑦
天王洲さんの天王洲さんが見えた。相変わらずこの人やってんな〜って素直な感想。けど、そんな事悠長に考えてる場合じゃないし、これ下手したら他の人に見られちゃいますって……
「ちょ、天王洲さん……!」
「え……? ちょ……」
天王洲さんと一緒に試着室に突入してカーテンを閉めた。そして必殺壁ドゥーン!
「ちょっと天王洲さん、話違うじゃないですか……?」
「な、なんのことかしら……」
「なんで履いてないんですか? 流石に履いてきてって言いましたよね?」
「わ、ワンピースだし……見えないと思って……」
「結局見えそうになってるじゃないですか!? ってか俺は見えちゃいましたし」
「に、西宮くんがピンク色が好きって言うからよ……!」
「無茶苦茶言わないでくださいよ! 色は言ったかもしれませんけど、そもそもこのスカートを手に取ったのは天王洲さんですからね!?」
「…………」
試着室で小声ではあるけど二人で口喧嘩をしている。状況的に見ても悪いのはどう考えても天王洲さんじゃん。側から見たらエロハプニングかもしれないけど、それは美少女である天王洲さんだからハプニングになるだけで、普通の人なら公然猥褻とかで捕まるからね?
「人がたくさんいると思って……その…て試したく……なって……」
「別に犯行動機は聞いてないですから」
「ご、ごめんなさい……」
「とりあえず、すぐに元の服に着替えてください」
試着室に二人っきりのこの状況ではあるけど、多少の怒りと焦りでそんな事はいちいち気にはならなかった。一応外の様子を伺いながら試着室を出て、天王洲さんが着替え終わるのを待っていた。
そしてしばらくしてから、申し訳なさそうに俯きながら天王洲さんが出てきた。
「おまたせ……」
「はい」
「…………」
「まだ何か見ますか?」
「とりあえず……ここのお店は出ましょ……」
天王洲さんがそう言ったからお店を出て、しばらくあてもなく会話もなく歩いていて、通路に設置されてるベンチに天王洲さんが座った。
「はぁ……」
「溜息吐きたいのはこっちですけどね」
「だからごめんなさいって謝ってるじゃない」
そしてしばしの無言。けど、そんな沈黙を破ったのは天王洲さんの方だった。
「ねぇ、西宮くん」
「はい?」
「今少し考えたのだけれど、私のコレがバレた所で、西宮くんには何も被害は出ないと思うのだけれど」
「普通に考えればそうですね」
「じゃあ、なぜ怒ったの?」
「嫉妬ですよ嫉妬」
「え?」
「天王洲さんの天王洲さんを見るのは俺だけがいいって嫉妬です。その他にも、天王洲財閥の令嬢がノーパンでショッピングモールに来てるって噂になるのを避ける為でもありますし、天王洲愛瑠って人物のイメージを守るってのもあります。まぁ、いろいろな感情がそこにはありますよ」
「そう……」
「好きでもない相手なら何にも言いません。むしろ干渉なんか絶対にしません。けど、天王洲さんはそうじゃないから、天王洲さんに向けてる気持ちはそうじゃないですよ」
「こんな変な私の……どこがいいのかしら……」
「まぁ、クラスで自分可愛いですよってひけらかしてる女の子よりは、そうやって自分の魅力に気づいていない感じがいいですよね。それに、俺だって普通じゃないんで」
普通なら憧れの人のこんな一面を知ったら幻滅するだろうし、誰かに言いふらしてしまうだろう。それが普通だも思う。だって変態だしあきらかにおかしい行動だし。でも、俺だって普通じゃないから、そんな天王洲さんの事を好きだと思えるし、可愛いとも思える。だからこそ、自分好きな人の笑顔を、生ケツを、生秘部を俺以外の人に見られたくないんだ。好きだからこそ、俺だけが独り占めしたいと思う感情なんだ。
「西宮くんは私の事……どんだけ好きなのよ……」
「そりゃもちろん——」
「あれ? 中也じゃん!」
「え?」
「え?」
俺と天王洲さんは同じく疑問符を浮かべた返事をした。まぁ、天王洲さんはそのまま分からないだろうけど、俺にはその人の存在を認識する事ができた。
「り、リタ……」
「うん、リタだヨ〜!」
金髪碧眼居候娘のリタ・セスクアリスの姿がそこにはあった。
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《令和コソコソ噂話》
第21話読了してくださりありがとうございました! 天王洲さんとリタの顔合わせ回でした! これにて心酔琵琶湖編は終わりになります! 次回から崩壊道五十三次編になります!
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