第2話 不埒三十六景②


 天王洲てんのうず愛瑠あいる。高校二年生で黒髪ロングで艶やかなキューティクルを靡かせて歩く姿は一枚の絵画のような人。

 血液型はA型で誕生日は8月25日。容姿端麗、スポーツ万能、成績優秀の三拍子揃った美少女。

 天王洲財閥の御令嬢で、趣味は読書で好きな食べ物はなんと餡子。前にも言ったけどブリオッシュみたいな洋菓子が好きそうだから意外だった。

 嫌いな食べ物は納豆で好きな色は青色、好きな教科は数学、嫌いな教科は歴史。好きな犬種はポメラニアン。

 女子には優しくて男子には異様に厳しい。笑顔が超可愛い。そしておっぱいもでかい。だけど男子には異様に厳しい。


 あと、何故か学校にノーパンで登校してきて、裏太ももと前方の秘部に一つずつホクロがある。


 そんな事実を知った瞬間に反動でついつい告白をしてしまった。その日は結局OKは貰えず、収穫なんてなかった。いや、収穫はめちゃくちゃあったな。むしろ失恋したけど気分は何故か清々しかった。


 家に帰ってもご飯を食べてても風呂に入っててもベッドに入っても、天王洲さんの天王洲さんが頭から離れなかった。だって俺の初めてだし、もう親的な存在じゃん? 


「けどまぁ、嫌われてるよなぁ」


 あんな事があったんだ。俺は天王洲さんに嫌われたに違いない。まぁ、生ケツと生秘部が見えたのはどう考えても天王洲さんの自業自得の他無いんですけどね。


 久しぶりに気持ちの良い睡眠をして、次の日いつも通り学校へ登校する。登校するとすれ違う生徒から何やらコソコソと言われている気が……まったくしなかった。

 なんも代わり映えしないいつもの朝だ。って事は天王洲さんに変な噂とか流されてはいないんだなって安心感があった。


「おい、天王洲愛瑠が来たぞ」


 そんなモブ男子の声を筆頭に、周りにいた生徒達が男女問わず視線を彼女の方に向けていた。

 天王洲愛瑠本人と、なんか取り巻きっぽい女子生徒もおまけでいるけど。

 みんながみんなおはようございますとか黄色い声をあげていて、その度に天王洲さんが律儀に挨拶をしている。


 俺はそんな有象無象の中に紛れる事はなかった。フラれたし、なんなら天王洲さんと会ったらなんか言われそうだし。あ、生徒会室で会うじゃん詰んだじゃん。


「お、おはよう。西宮くん」

「はい?」

「…………」

「あ、おはようございます。天王洲さん」


 そんな事考えていると、不意にノーパン先輩……いや、天王洲さんから声をかけられた。頬を少し赤らめて、まるで恋人関係になった次の日くらいに学校で会って挨拶をしたけど、照れくさくて頬を染めてしまう女の子みたいじゃないですか。これってもう付き合ってますよね? みたいな反応なんですけど。


 そのやり取りだけを交わして、天王洲さんは一人歩いて行ってしまった。天王洲さんが通り過ぎた後に、今度は周りの有象無象達は俺に視線を向けてきた。


「なんでアイツ、天王洲さんから声かけられてんだ?」

「アイツ何もんだよ」

「多分だけど、同じ生徒会だからじゃない? 羨ましいな」


 生徒会に入ってて良かったと心底思った瞬間だった。今日も放課後に生徒会の集まりあるし、声をかけられたって事はまだ嫌われてもないよね? 


 今日も生ケツに生秘部拝めるかもしれないね。放課後が楽しみウキウキルンルンステップをしながら教室へ向かうのだった。



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