学校一の美少女はノーパンだし、転校してきた幼馴染がノーブラだし、とにかく美少女にたくさん出くわす件について。
能登 絵梨
第1話 不埒三十六景①
黒髪ロングで艶やかなキューティクルを靡かせて歩く姿は一枚の絵画のようだ。
血液型はA型で誕生日は8月25日。容姿端麗、スポーツ万能、成績優秀の三拍子揃った美少女。
天王洲財閥の御令嬢で、趣味は読書で好きな食べ物はなんと餡子。なんかブリオッシュが好きそうだから意外だった。
嫌いな食べ物は納豆で好きな色は青色、好きな教科は数学、嫌いな教科は歴史。好きな犬種はポメラニアン。
女子には優しくて男子には異様に厳しい。笑顔が超可愛い。そしておっぱいもでかい。だけど男子には異様に厳しい。
我が校一の美少女且つ全学年の男子からの視線を釘付けにしている彼女に告白をする者は後を経たないが、その恋が実る事は一度もない。彼女は毎度毎度こっ酷くフリ捨てている。
俺もそんな
手に届かないのなら、届かないなりに接する方法を考えた俺の絶対的勝利だ。
特に深く関わろうとせず、生徒会室で会ったら挨拶を交わして、必要以上の会話をせずに本当に必要な業務感の間だけの会話。それでも天王洲さんと同じ空間に居て同じ空気を吸えて天王洲さんの吐いた二酸化炭素を吸えてる事が幸福だと思った。
今日もそんなありきたりな自己満足の時間を過ごしていた。夕暮れ時の生徒会室。西日から差す淡い夕陽に照らされている生徒会長、天王洲さんには形容し難い美しさがあった。
「
あ、名前呼ばれた。嬉しいもうそれだけで幸せだ。
「はい、なんでしょう」
「棚の上のファイルを取りたいの」
「分かりました。俺が取ります」
「いいえ、きっとまだ入りたての西宮くんには分からないだろうから、私がファイルを探すわ」
「分かりました。では、俺は何をすれば?」
「脚立を使うから、押さえててくれないかしら」
「分かりました」
こんな具合で雑談は一切せず、いたってシンプルな業務に関わる内容の会話。天王洲さんから香るシャンプーだかトリートメントだかの匂い、すんげぇ好きだわ。
生徒会室に置かれている脚立を持ってきて、天王洲さんが昇って俺がそれを支えて。
俺の視線の高さに天王洲さんのお尻があるから、多少しゃがめばパンツくらいは見えるかもしれない。いや、そんな邪な考えはダメだ。俺ただ天王洲さんを眺めているだけでも充分じゃないか。
「………」
それでも、こんなチャンス滅多に無くないか? っと思う自分もいた。あの天王洲愛瑠のパンツを拝めるんだぞ? 純潔の
脳内天使と悪魔が葛藤してるけど、思春期男子に仕える天使に勝ち目は無くて、邪な悪魔の囁きの方が圧倒的に強かった。
少し膝を折って屈んで、パンツの色の答え合わせをしようとした。
そしてその答えは——
「肌……色?」
俺が見た光景はシミ一つ無い綺麗な肌色だった。よく見ると裏太もも辺りにホクロがあった。ってかそんな所にホクロとかめっちゃエロいな。いや、そんなホクロじゃなくて問題は綺麗な肌色の方だろうが! そもそもなんでも肌色なんだ? なんでこの人パンツ履いてないの? なんでノーパンで学校来てんの?
このように次から次へと疑問は湧き出てくるが、それよりも今は綺麗な肌色を瞳に焼き付ける方が優先だろう。
普段は天王洲さんに釘付けなのに、今日は、今この瞬間だけは天王洲さんのお尻に夢中だった。大きくても良いけど、小振りなお尻も良いよね。そんな熱視線を向けていると、上から声が聞こえてきた。
「西宮くん。これ受け取っ…………」
「あ………」
視線が合った。お互い何も言葉を発さず、見つめ合うと素直にお喋りできないんですね。いや、そんなんじゃなくて多分だけど俺が天王洲さんのお尻見てたのがバレたんだよね……?
「へ、変態……!」
「うげ……」
見つけたクリアファイルで脳天殴るなんてとんだ暴力生徒会長様で。変態って言葉、割とあなたには言われたくないと思ってもいいですか……?
クリアファイルで殴られた衝撃で俺は倒れ、その反動で天王洲さんも脚立からバランスを崩してしまった。
俺はうつ伏せに倒れて、痛みを堪えながらも顔を上げると、尻餅を付いた天王洲さんの天王洲さんが豪快にオープンになっていた。
その景色はまさに絶景だった。
今なら石川さん家の五右衛門くんとの意気投合できるかもしれない。
この景色を例えるならば、いや……例える事なんてできないだろう。
西日から差す淡い夕陽に照らされた生徒会室で俺は女性の秘部を初めて見たのだ。そう、生でだ。しかもめっちゃ至近距離だし。いつも見るズリネタにはザイモクかかってるからしっかりハッキリくっきりは見えないからね。
そして何よりその秘部の持ち主は、あの天王洲愛瑠だぞ? なんでこの人パンツ履いてないの? とか、なんでこの人ノーパンなの? とか、なんでツルツルなの? とか色々疑問は残るけれど、今はその絶景を時間が許す限り見続ける事が優先だろう。ってか、この人秘部の少し横にもホクロあるじゃんクッソエロいな。
痛がる彼女を他所に真剣に見入っていると、その絶景は見えなくてなってしまった。
西日の淡い夕陽に照らされた彼女は瞳にうっすらと涙を浮かべて、顔も朱色に染まっていた。あぁ、これが恋ってやつだろうか。いや、違いますね、はい。
「あの……天王洲さん」
「な……なによ」
「好きです」
「……は、はい?」
「好きです。俺と付き合ってください」
俺の口から出たのはそんなセリフだった。その言葉に彼女は目をまん丸に見開いて、すごい困惑している様子だった。
「それで、返事は?」
「……無理」
「えー……」
「むしろ、こんな状況で告白なんて……貴方、頭おかしいんじゃないの……」
いや、むしろこんな状況だから告白するんじゃないか。俺の初めてを奪った天王洲さんには責任を取ってもらいたいし。
「俺の初めてを奪っておいて、天王洲さんの方こそ何言ってるんですか!?」
「は、はぁ……?」
「責任取って俺と付き合ってくださいよ!」
きっと、雛鳥が卵から出てきた時に初めて見る物を親だと思い込むのと同じで、初めて秘部を見た相手が天王洲さんだったから。
「い、意味分かんないし……そーゆーの……本当無理なの……」
「そーゆーのって?」
「私の事ロクに知りもしないで……そう言って来る人が」
「天王洲さんの尻なら知ってます」
「う、うるさい……! 忘れなさい!」
そう言って投げつけられたファイルが顔面に直撃して悶える。いや、そんな本気で投げないでください、マジ意識飛びかけるから。
「綺麗だとか可愛いだとか……そんな中身の無い言葉で告白されたって……私の事知りもしないクセに……」
「血液型はA型で誕生日は8月25日。スポーツ万能で成績も優秀。天王洲財閥の御令嬢で、趣味は読書で好きな食べ物は餡子」
「え……?」
「俺は天王洲さんの事を、知っています」
「そんなの……わりと知られている情報よ……」
「嫌いな食べ物は納豆で好きな色は青色、好きな教科は数学、嫌いな教科は歴史。好きな犬種はポメラニアン」
「それだって……知っている人は知っているわ……」
確かに、そんな情報は我が校の生徒なら誰でも知っている情報だ。ほとんどの男子生徒が知っているはずだ。だけど、俺には他の男子生徒達が知らないであろう情報を知っている。
「天王洲の左足の裏太ももには、ホクロがあります」
「……え?」
「あと、前の方にも、一つ」
「う、嘘よそんなの……! は、恥ずかしいからその事はもう言わないで……」
「どうですか?」
「え?」
「俺は天王洲さんを知っています。それこそ、天王洲さん自身が知らない事もですよ」
西日が差し淡い夕陽に照らされた生徒会室で、俺は天王洲さんに、イヤらしく卑劣で不埒な告白をするのだった。
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《令和コソコソ噂話》
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