第11話 駆ける


一瞬で理解する。俺の予想はあたってしまった。拳に力が入ってしまう。



「だから嫌なんだよ。」



「そ、そんなこと言ってないで。早く助けないと。」



一人が魔物に囲まれていた。一人が。虫唾が走る。まだ、魔物の方がマシなのかもな。そんなことを考えていると、一匹の魔物がこっちに気付いたみたいだ。



「おい、お前らこっちに来いよ。俺が相手してやるよ。」



言葉は通じてないはずだが、一斉に他の魔物がこっちを見てきた。そして、一斉に、襲い掛かってくる。そう来なくちゃ。物分かりが良くて助かる。



「ファイア。ファイア。ファイア‼」



俺は指を滑らせ、魔物たちに向かって魔法を放つ。

何だかいつもより威力が強く感じた。・・・そう感じただけだった。

そううまくはいかなかった。逆に魔物たちを怒らせてしまう。

この数を倒すことは今の俺には不可能であると再認識する。



「はっははは。は、話せばわかる、な。落ち着いて。」



そう諭しても魔物たちは聞いてくれなかった。じりじりとこっちに近づいてくる。

俺も少しずつ後ずさりする。そして、レクスに話かける。



「おいレクス。俺は今から逃げる。」



「えっ。でもあの子は?」



「それは大丈夫だ。さっきの攻撃で全員こっちに注意を逸らすことができたみたいだ。」



レクスが複雑そうな顔をしている。



「もう、かっこいいんだか、かっこ悪いんだかわからないよ。」



「何とでも言え。今は助かることが先決だ。魔法を放ったら走るから、お前は・・・任せるぞ。」


俺は一瞬別のところに視線を移した。そして、レクスは理解したのか、頷いてくれる。レクスの言葉をまたずに指を滑らす。



「ファイア‼」



俺は全力で駆けだした。死に物狂いで走る。レクスの応援を背に。



「ロガ、無事でいてね。」



後ろを振り返るとあそこにいた魔物が全て俺についてくる。

予想はあたったみたいだ。これは嬉しい方だ。ただ、喜んでばかりもいられない。



「はあ、何で俺がこんな目に。でも、ここで死ぬわけにもいかないしな。どうにか切り抜けてやるよ。」



徐々に距離が離れて言っていると思う。足音が遠のいていくのだから。

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