第10話 初ダンジョン

俺はヒルに教えて貰ったダンジョンに挑むつもりだ。

本ばかり見ている姿に見かねたのかダンジョン攻略を進めてきた。


”そんなに本ばかり見ていてもわからないものはわからないよ。それにあのダンジョンを見つけたにせよ、力がないと攻略できないと思うよ。ほらここのダンジョンを挑むのはどうかな。”



そう進めてくれたのが目の前に見えているもの。この場所には見合わない異質な建物が立っている。森のど真ん中。そこに不自然に岩でできた城があった。



「なんだよこれ。本当に自然にできたモノなのかよ。それに雰囲気が異様だ。

授業で見たことがあるとはいえ、こんなにも違うなんて。」



俺が身震いをしてしまう。決して怖いわけではない。興奮して震えているんだ。

その姿を見たレクスが野次を飛ばしてくる。レクスは目が飛び出るのかと思うぐらいに見開き、窄めた口に前足をあてていた。



「ロガが震えてる。ぷぷぷ。もしかして怖いの?」



ボカ



「うう。」



「さあ、行くか。」



俺は、泣いているレクスを尻目に初めてダンジョンに足を踏み入れた。






ダンジョンの中は魔物で埋め尽くされていた。ゴブリン、ヴォルフ、オーク、火を纏ったコウモリみたいのさえいた。それになんだか暑い。汗がダラダラ流れてくる。もしかしてこのダンジョンがあのダンジョンだったりして。・・・なーんてな。ここは山ですらなかったしそれはないだろう。それに大勢に知られているわけないはずだ。



それにしても、外見と中身にギャップがあり過ぎる。中は普通にそこら辺にありそうな洞窟だった。ダンジョンらしいと言えばダンジョンらしいのだが、あの外見を見て城探索でもできると思っていたのでがっかりしてしまった。レクスもそう思ったらしい。



「肩透かしだね。ロガ。」



「ああ、でも、気を抜いちゃだめだ。魔物たちもあんなにいる。あんまり相手もしてられないし、できるだけ避けて通るぞ。」



レクスは「うん。」と返事をしてくる。空気を読んでいるのかレクスもふざけていない。それでも態度と恰好が一致しないとこんなにも笑いが込み上げてくるなんて。笑いをこらえるのに必死だった。




俺は戦闘を避けながらどうにかこうにか進むことができている。一,二回戦闘を避けられない場面もあったがなんとか乗り越えることができた。ただ、どれぐらい進んでいるのかわからない。それを考えるだけで精神力を奪われた。本物のダンジョンは予想以上に辛いものだった。



「はあ、まだつかないのか。少し休憩するか。」



休憩できそうなところがあったので、少し休憩してから進もうとした時悲鳴が聞こえてきた。



「きゃあああああ‼」



聞き覚えのある声。俺の予想はあたっていたらしい。レクスはキョロキョロ辺りを見回して落ち着かない様子だった。そして一点を指さしている。



「ロガ、あれ。魔物たちが一点に集まっていくよ。まずいんじゃない?」



「それがどうかしたか?あいつらはもうダンジョン3つ攻略しているんだろう。俺が出る幕じゃないよ。」



そういうと、レクスは俺をじっと見つめてくる。まっすぐ訴えかけるように。



「ねえ、ロガ。本当にそれでいいの?」



追い打ちをかけるように叫び声が聞こえてくる。



「誰か、誰か助けて―‼」



「ああ、もうわかったよ。行けばいいんだろ。行けば。どうなっても知らないからな。」



「そう来なくっちゃ。」




俺は駆け出した。魔物たちが向かう方向に。無謀な賭けに出た。でも、あんなに必死に助けを呼ぶ声を聞いてしまっては動かずにはいられなかった。それに何だか嫌な予感がした。一人の悲鳴しか聞こえなかったことだ。俺が今考えていることが正しいのならば怒りでどうにかなってしまいそうだった。どうかこの考えだけは外れていてくれと願うばかりだ。

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