第3話 6/18『今日、晴れなくても明日はきっと晴れる』
行ってしまいました。
翼さん、ちょっと変な人でしたけど、なんかとても面白い人でしたね。
日の沈んだ空。
見上げ私は少し腑に落ちない気分になりました。
「もうちょっと一緒にいたかったです」
でも彼は「またくる」という言葉を私に言い残して行きましたが、それがいつのことになるのやら。
先の話になるかもしれませんが、気長にその日まで待とうと思います。
中学に上がってからまともに、知人以外とあまり話したことありませんでしたね。
次会う日。
その日が来るまでは私は頑張らなければなりません。
どんな辛いことがあったとしても。
微笑を、虫の鳴く草木背景に思いにふけっていると横から自転車がこちらに向かってくる音が。
ペダルを勢いよく素早く足で漕ぎ、もの凄い速さでこちらへ向かってきます。
チェーンはずれませんか? 危ないですよ。
一目見て。それが誰なのか、私には分かりました。
「あゆあゆ、どうしたの空なんかぼーと見上げて」
「陽香ちゃん、今帰りですか。……スピードの出し過ぎは危険ですよ」
「えーいいじゃんいいじゃん。爽快感あるし」
「まったくもう、あなたは危険という言葉を知らないんですか」
相変わらず怖い物しらずです。
過去に地元の先生にスピード違反を受けて、お叱りを受けた彼女でもあります。
現在になってもその癖は一向に直らず、現在にいたるわけですが。
快活した
怖い物なしのポニーテールの少女は、
通称、陽香ちゃんは、私の昔からの幼なじみで数少ない私の友達の1人です。
もう1人、私の幼なじみがいるのですが今はいないですね。
「陽香ちゃん、海里ちゃんは一緒じゃないんですか?」
苦笑いしながら、彼女は申しわけなさそうに答えてくれました。
「海里は、生徒会があるから一緒じゃないんだ。ごめん」
「そうなんですか。 ……大変なんですね海里ちゃんは」
もう1人。
幼なじみである
昔2人は、漫才するようにふざけたやりとりをしていましたが、今となっては全く見なくなりました。
成績優秀でスポーツ万能。おまけに生徒会の会長を務める人です。
昔はよく、3人で遊んでいたんですが、今では私達3人が揃う機会は滅多になくごく希なできごととなりました。
でも陽香ちゃんは、こうして必ず夕暮れ時に帰ってきます。
時々ばったり、今日のように会ったりする時は、一緒に帰ったりしていますよ。
部活は入っていないらしいので完全な帰宅部員です。
入ればいいのにと、1度勧めはしたのですが、あっさり断られちゃいました。
彼女曰く、時間を割かれるのは嫌なんだとか。 こうして私の目の前に、現れたということは考えるまでもありません。
多分、今日もそんな事言ってくるのでは……。
「それはそうとあゆあゆ、今日も一緒に帰ろうよ!」
ニコニコしながら陽香ちゃんは言ってきました。
陽香ちゃん見ていると、それはまるで眩しすぎる太陽の光みたいに輝いている気がします。
でも昔から陽香ちゃんはこんな感じなんですよ。
相変わらずのハイテンションな振る舞い。それが陽香ちゃんらしい"いつも"なんですから。
「いいですよ、でも時間もう遅いんで寄り道はなしですよ」
「えぇ! そんなぁ折角お菓子買って帰ろうと思ったのに」
陽香ちゃんはこういう持ちかけには滅法弱いです。
昔海里ちゃんに、困ったらこういう持ちかけをすれば対処できると言っていました。
ですので、これは海里ちゃんからの秘伝技のようなものです。
「寄り道するなら1人で帰って下さい。そしたらお菓子とか買えますよね」
微笑む私に対して陽香ちゃんは諦める様子をして、1つ吐息を吐きました。
どうやら諦めてくれたみたいですね。
ひとまず安堵。陽香ちゃんは駄菓子屋のお菓子が大好きです。
こうしていつも、寄り道でお菓子を買う食いしん坊屋さんです。
そんなことしていたら、晩ご飯食べられなくなっちゃいますよと言いたくなるのですが。
昔、学校帰りに海里ちゃんによく、叱られていた時もありましたね懐かしい。
今時間を確認したら、18時30分を回っていました。
町の家々から電灯が灯り、夕焼けの道を照らし出しています。
少しはしたなく、鼻で嗅いでみると芳香が漂ってきました。……腹の音がなりそうなおいしそうな香りです。
この強烈な香辛料の香りは……カレーでしょうか。
おっといけない。晩ご飯の準備をしないといけないので、寄り道なんかしたら時間ロス確定ですね危ないところです。
「わ、分かったよ。寄り道はしないから」
ハイテンションな彼女は、しょんぼりした顔で言う事を聞いてくれました。
先ほどの威勢はどこへ消えたのやら。
帰る途中。
私と陽香ちゃんは、ゆっくりと歩きながら楽しく会話をしました。
会話の中で、テストで赤点を取ってしまった話題をまた私に持ちかけてきます。
「……また、赤点ですか。ちゃんと真面目に勉強していますか?」
「いやさ、なんかどうでもいいから適当にばばばばー!ってテスト用紙に書けば良い点数がもらえるかな~って思って。……でその結果が」
「赤点と……」
頭が悪いのは昔から変わりませんね。海里ちゃんとは対照的な彼女。
どうしたらいつも赤点とり続けられるのか、不思議でままなりません。
「あぁもう思い出したくないよ! 今日ようやく補習が全部おわったんだから」
陽香ちゃんは今日やっと補習牢獄から釈放され、自由になったようです。
いい加減テスト対策ぐらい自分で練ってもらいたいんですが。
……ならどうやって今の高校を陽香ちゃんは受かったかって? その答えはたった1つですよ。海里ちゃんに試験範囲全部教えてもらっていましたから。
それで辛うじて合格したという感じです。
海里ちゃんがいなかったら、彼女は高校に行くことすらできなかったでしょう。
「少しは勉強したらどうなんです? また補習行きにされちゃいますよ」
「うぅ……また難題をふっかけてくるねあゆあゆは。小さいながら恐ろしい子!」
「だって事実ですよね。……というか小さい言わないで下さい!」
地元に通っている中学校の全校生徒の、平均的身長からみても私は小学生並の座高しかないです。
そこが結構コンプレックスなのですが、背が高ければいいとかそんなこと微塵にも思いません。
海里ちゃんは、「逆に低い方が可愛いから」と言ってくれたこともありましたし。
「精進しないとだね……あゆあゆ教えてくれない?」
対策を講じて、その行き着いた答えがそれですか。
……私を何か奥の手か何かと勘違いしているのでは?
「あの……私まだ、中学生なんですけど」
「……あ、そうだった。……ごめん」
何かあるんだろうなと睨んではいたんですが、少々考え過ぎだったようです。
ただ単に無知。何も考えずに切り出したことのようです。
話を変え。
「それで陽香ちゃん、まだ部活決まらないんですか?」
陽香ちゃんは呆れた様子で、答えてきました。
「何回も言ってんじゃん。私は部活なんて興味ないよ。私には私がまだ見ぬ冒険が目の前に広がっているんだから!!」
と張り切る陽香ちゃん。
これが高校生。青春とは奥深いもののようですね。
「そ、そうなんですか」
時間というものはあっという間ですからね。
できれば有効的に使いたいです、特にピーク時期である高校生は特に。
「さあ、あゆあゆも! あの夕日に向かって走ろう……」
「まあもう沈んじゃっていますけどね」
陽香ちゃんが太陽に指を指し、かっこよく決めるつもりだったのですが、日は既に沈んでいました。
タイミングが悪かったですね。もしもう少し早めに言っていればかっこよく決められていたのかも知れませんが。
とどめに私は、ツッコミを入れ指摘しました。
「太陽よ、沈まないでおくれ! 私は情熱に燃える日々を送りたいんだ。ずっと」
立ち止まり、沈んだ太陽を見ながら泣き顔になる陽香ちゃん。相当滑ってしまった事を後悔しているようです。そこまで気にすることだったんでしょうか。
励ますように私は。
「いえ、陽香ちゃんの方がよっぽど燃えているように見えます」
なんかこう……陽香ちゃんは、いつまでも燃えさかる太陽みたいです。
今は涙を流していますが。
「私は太陽のように、輝く存在。そのようにありたいよ」
変なテレビの見過ぎなんじゃないでしょうか? 眉をひそめ気がかりにする私でした。
◉ ◉ ◉
「そうなんだ、隣町から人が来てその人と遊んだんだ」
「立川翼さんって言うんですけど」
私は陽香ちゃんに翼さんのことを話しました。
すると陽香ちゃんは、深々と興味深そうに話を聞きます。
それで聞いた感想はというと。
「誰かは知らないけど、私がそこにいれば100倍盛り上がったと思うけどね」
陽香ちゃんらしい返答。
100倍は言い過ぎだと思いますけど、そこまで面白い内容だったんですかね。
単に、街案内しながら会話も交えて町中を回っただけなんですけど。
「でも雨の中2人っきりかあ。あゆあゆもやるねぇ~。……っていうかさそれもうデートじゃん」
辱めを受ける私。
顔を紅潮させ、被っている帽子を深く覆い被さります。唐突になに言うんですか。……もう陽香ちゃんったら。
「な、何を言うんですか陽香ちゃんは。わ、わ、私はただ彼を待ち案内しただけで大したことは」
すると「このこの~」と肘で私を突いてくる陽香ちゃん。擽ったいです。
「もうやめて下さいって」
照れ隠ししているのは事実ですが、一目つくところで公に述べることなんて恥ずかしいです。
「いや、私にもそんな時代がありましたなあ~」
陽香ちゃんは、まだまだ若いのになに年配の方々が口出しするようなことを。
冗談で言っているつもりでしょうが、少々悪乗り過ぎませんかね。
くすっと笑いながら私は。
「まだ、そういう年頃じゃないですよ陽香ちゃん」
「だよねぇ。でもこれはこれで、なんか面白い事聞けたし……あ、そろそろ私の家だ」
あの陽香ちゃん、まさか町中に晒すつもりですか私が翼さんを…………。
いえ、まずそんなことはないと思いますがね。
道を歩く途中に数軒の家が建ち並んでいます。その道中に陽香ちゃんは足を止めました。そこは陽香ちゃんの家です。
「じゃねあゆあゆ、またね。夏休みになったらいっぱい遊ぼうね」
「遊ぶのも大事ですけど、陽香ちゃんは勉強をちゃんとして下さい……ね」
すると陽香ちゃんは無言で門扉を開け去って行きます。
絶対やりたくないとか思っていますよね。
「や、やるよ。やる。それじゃあねええ」
拒絶感、丸出しじゃないですか。高校の勉強ってそれほどハードなんですかね。
今度海里ちゃんにでも聞いてみましょう。
◉ ◉ ◉
それから私は家に帰り、自炊し、お風呂を沸かしました。
ご飯を済ませ、お風呂も終わらせます。
両親の帰りはとても遅いので、なかなか家族が揃うことは滅多にありません。
最近は両親共々泊まり込みで、顔を見合わせてもいないような気がします。
今日は学校の出た宿題を、布団で寝ながらしました。
「難しいですね。……頭をよく使う問題は苦手です」
結構頭を使う、難関な問題が多かったですがなんとか終わらせることができました。
すると携帯から電話がかかってきました。
プルルル……。
「誰ですか? ……お母さん?」
掛けてきたのはお母さんでした。
画面を指で操作して、携帯を耳に当てます。……少々勉強の疲れが残っていて半目開きですが。
こんな夜更けに一体どういった要件で?
『あぁあゆり? おつかいごめんけど行ってくれる?』
「それで、何買ってくればいいんですか?」
「お肉かしらね。鳥のもも。そんなに高くないから2000円で買えるはずよ。……貯金箱から自由に取っていいからそれじゃお願いね」
ツーツー。
と言い残してお母さんは通話を切ってしまいました。
「お急ぎだったんですかね」
とても早口で淡々と喋っていましたが、仕事は多忙なんでしょうかね。
少し夜に出かけるのは億劫ですが、頼まれたからには仕方がありません。
私は今居る自分の部屋の2階から、1階まで降り、テレビの下に置かれている勾玉の貯金箱を開けます。
「あった2000円」
カラン。
と音を鳴らしながら中身を取り出して。2000円をポケットに入れ、外へと出かけます。
精肉を取り扱っているスーパーが少し遠い所に建っていますが、そこに行きます。
夜道から聞こえてくる車の物音が、少し鳥肌立つくらい怖いですけど頑張りましょう。自転車でしばらく漕ぎ続けて。
町にある大型店。
左右には自動扉がついており、外、店内と共に人がたくさん行き交う様子がありました。
お肉の売り場へと行き、言われた通りにもも肉を探します。
「えぇと……もも肉は……もも肉……ありました」
鶏肉の置かれた棚の列。
少し目を泳がせると、すぐにそれが見入りました。真空パックに2割引と書かれているもも肉。
そういえば夜でしたね。……夜になると比較的に安く売り出す傾向がありますが…………これにしましょう。
会計を済ませて。
「では帰りましょうか」
家へと帰る途中。
橋でずっと
あれは。
見覚えのある風格。その見覚えのする人影に目が留まります。
服装は、陽香ちゃんと模様が一緒。
なによりも特徴的な長髪が一番の目印でした。
それを認識した私は、誰なのか一目で分かりました。
……こちらに気づいたのか、私の方を彼女は振り向きます。
冷酷な眼差しと、長い紫の髪が特徴的な人です。
「あら……あゆり。こんな時間にどうしたの? ……あぁお使い頼まれたの?」
「はい、先ほど電話が来たものでして」
彼女はにこっと微笑むと、頭を優しく撫でてくれました。
手に持つポリ袋をみて彼女は、どうして私がこんな夜遅くに町にいるのか察しました。
「海里ちゃんこそ、川をみながらどうしたんですか?」
「別に、暇だから立ち寄っただけよ」
彼女の名前は
どうして彼女がぼーと流れる川を見下ろしているのかは分かりません。
ですが彼女のその顔を見ていると何処か辛い感じが伝わってきます。……なぜでしょう。
「さっき帰ってきたんですか?」
「そうよ、それで息抜きにここへ立ち寄ったわけ。まあここに来ても何もないっていうのは分かるんだけどね」
「海里ちゃんなんか辛そうです」
「そんなことないわよ、気にしないで」
「すみません気に障って」
でもその顔を見ていると無理になんか我慢しているようなそんな気がします。
言いたくても言えない感じです。
「さああゆり、夜は冷えるわよもう帰った方がいいわ」
「だったら海里ちゃんも帰った方がいいんじゃないですか?」
私に気遣ってくれた海里ちゃん。でもそれは海里ちゃんにも言えることですよね。
すると海里ちゃんは。
「私はもうちょっとここにいるわ」
「そうですか、でも海里ちゃんも早く帰ったほうがいいですよ」
「……ありがとう」
「それじゃ私行きますね」
私がその場を離れようとしたとき――――。
「あゆり」
ふと振り向きます。
「学校楽しい?」
「まあまあってところですよ」
「そう…………何かあったら私に遠慮なく言っていいのよ。力になってあげるから」
海里ちゃんはそういうと、多少微笑んだように見えました。
ほんの一瞬ですけど。
◉ ◉ ◉
帰ってお肉を冷蔵庫の中に入れました。
お母さんが帰ってきた時に分かるよう、置き手紙を書いておいときます。
『お母さんへ。鳥のもも買ってきました。お肉は冷蔵庫に入れてあります。
あゆり』
「これでよしっと」
余ったお釣りの小銭は、貯金箱に入れます。
これで今日やることはおわりです。
「さてそろそろ寝ましょうか」
時間を見ると21時を過ぎていました。私はいつも21時頃に寝るので、いい時間帯ですね。
布団に入り電気を消し寝ますおやすみなさい。
◉ ◉ ◉
翌日。
天候は雨でした。家から傘を1本持ち出し、学校に行く支度を整えて学校に行きます。
学校は少し向こうまで歩いた所に建っているので、そんなに遠くはありません。
学校行くと続々とそこに通う生徒の姿が見えてきます。わやわやと話す3人もいれば、1人トコトコ歩く人もいます。
昇降口に入り、下駄箱へ。
「あれ……」
靴を取ろうとしました。
ですが下駄箱の中には。
紙くずが中にいくつも散乱していて、下駄箱の中は清潔感をとどめていません。
「…………またですか」
私は中を散らかしたりしません。
こんなことするのは他の人の仕業に違いないでしょう。
私はそれを無視して、中にあった上履きを手に取り履こうとします。ですが、最悪なことに。
「どうして……」
上履きの底にも、紙くずがたくさん詰められていました。
「……」
とても悲しい気持ちになりました。
……私玉川あゆりは学校では疎外され、虐められています。
特に悪いことはやってはいないんですが、この仕打ちが中学1年の終わりからずっと続いているのです。
先生に相談するも、私が自分でやった悪戯だと信じてもらえずその結果。
今日までこのような虐めの被害に私はあっているのです。勿論授業はちゃんと受けています。
受けはいるのですがなかなか環境はいいとは言い切れません。
「玉川さん、これを答えなさい」
「……すみません聞いていなかったです」
「ふははははは……」
授業中、授業を聞いていなかった私がそう答えると、周りの生徒は私を侮辱するように笑います。
「……」
そして放課後、帰る時間になったので私は帰ります。
部活は中学1年の最初の頃はやっていましたが、虐めを受けるようになってからはやめています。
なぜならそこにいても私は1人虐められるからです。私の安らぎを与えてくれる場所は1つもないので。
「……」
自分の下駄箱まで歩いて下履きを確認します。靴は……。
「はあ……」
底にまた紙くずが詰められていました。
私はその詰められた紙くずを靴から吐き出して、履きます。
そして傘置き場に行き、自分の傘を探します。
「……ない。……ない。……ない」
私の傘はそこには一切ありませんでした。
傘は朝ちゃんとここへさしたはずなんですけど。
そして校門側。……外をみるとあるものが落ちていました。
私は慌ててかけよりそれを手に取ります。
それは朝私がさした、紛れもない自分の傘でした。
ですがその有様は酷かったです。
ビニールは焼けた様に崩れ落ちていてツギハギが見える状態になっています。とても再利用するには難しい状態でした。
…………。
私は空を見上げました。
雨は激しさが増して、大雨となり私に襲いかかります。
あっという間に私の服は水浸しに。
そして私は、そのまま悲しみに耐えながら歯を食いしばりながら、家へと帰りました。
海里ちゃんの言葉を思い出します。
(学校楽しい?)
本当は虐められているとかそんなこと、軽々しく言えたものではありません。
友達を巻き込んでまで、迷惑はかけたくないんで。
◉ ◉ ◉
『今日の降水確率は玉川町に80パーセント。隣町も同様です。……外出する際は』
横で天気予報の流れるテレビの音。
そんな電子音に耳を傾けず、私はひたすら外に映る雨の町を眺める一方でした。
半目開きでぼそっと小声で「雨か」と呟きます。
この雨は、なんだか私に似ています。
悲しくても悲しくても、満たされないこの感情。
泣いても泣ききれない涙の数。
それは自分に重ねることができました。。
そんな雨を見上げながら私は一粒の涙を流し言います。
「雨があがる頃に私の不安な心も取り除けますように」と。
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