10.好きとすら言えない
ジュンシーが父上にシャルへの別れの挨拶がどうしてもしたいと言った。
いくら仲がいいとはいえ王族、その願いを無碍に出来はしない。
わかってはいるが、嫌で嫌で仕方がないが、シャルに挨拶をするのを許可した。
『シャルロット・ティファニー嬢。私の婚約は本気だからその気になったらいつでも言ってくれ。ではまた!』
爆弾発言を落としたがまだ見逃そうと思っていたらジュンシーはシャルの頬にキスをした。
そして逃げるように帰って行った。
無駄に女慣れしてる奴だからああいったことを平気でやっていく。
シャルを見ると右の目元を抑えて少し驚いている。
キスされたのは左頬のはずなんだけど…
だが次第にその顔は少し切なそうに目線を落としていっている。
こちらから見ればジュンシーに惚れてしまったのかと思ってしまうような表情…
まさか…
そう思うと彼女は今度は不貞腐れたように目元にあった手を胸元まで下げ、目線も下がっている。
少し前の事を思い出してしまったがそれよりも気になってしまう…聞きたくないが否定して欲しい…
***
あの後すぐにシャルをお茶に誘った。
どう切り出せばいいのか分からずお互いに笑みを作っているのに無言が続いていて少し気まずい。
誘ったのは僕なんだけどなかなか聞けなくて…
でも聞かなきゃ…だよな…
「あなたは…ジュンシーと婚約したいの?」
「あら?どういった意味合いですの?」
一瞬の本気で意味がわからないという表情に心から安心する。
その後すぐに妖艶な笑みに切り替えられた表情にドキッと心臓が跳ねる。
どれだけ好きにさせれば気が済むんだろう…
全く伝わらないとわかっていても…
日を増す事に好きになってしまっている気がする…
そんな自分に半ば呆れるな。
「もういいよ…気にしないで。」
別にジュンシーの事を好きとか言うわけではなさそう…
でも…
「なんであんな表情を…」
気になるけど怖くて聞けない。
思ったよりも僕は弱いらしい。
未だにはっきりと“好き”と伝えられない事からも分かるけど。
「なんですか殿下?お声が小さくて聞き取れませんので私には何か仰いたいことがあるのでしたら…しっかりと、私に、聞こえるように仰ってくださらない?」
あれ?本気で怒ってない?
そんな怒らせるつもりなんてないんだけど…
「いや……」
言おうとした言葉が1文字も出すことが出来ず言葉が止まった。
もしそこではっきりと拒絶されたら?
本気の拒絶はされたことがない…だから…
シャルは僕の言葉が止まったことに気がついたのかより不機嫌に声を発する。
「私は帰らせて頂きますわ。本日はありがとうございました。それではご機嫌麗しゅう。」
彼女は止める事さえ許さない雰囲気で出ていってしまった…
***
あと一息の所まで来ているこの計画…
彼女の不安視していることを全て取り除いた時に必ず思いを伝えよう…
そこではっきりと拒絶されるかもしれない…
でも…せめてそれまでは…
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