3.すぐに渡してくれてもいいのに

彼女が婚約の受け入れてくれた話を今、目の前にいる公爵から聞いた。


「ただ…」

「どうかしたの?」


ティファニー公爵はとても言いにくそうな顔をしている。


「娘はまたなにか頓珍漢な方向に努力を始めまして…」

「うん。」

「殿下婚約を破棄させる気でいるようです…」

「え?どうしてそうなったの?」

「いや…娘の考えは私には理解できないのであくまで憶測になりますけど…」

「それでもいいから!まずなんで…」



最初に破棄させようとしてるのかと聞けばやっぱり公爵家のパワーバランスを気にしてるとしか思えないと返された。

そして破棄させようとしてるのにまず婚約したのかは単純に王家からの申し出を断るわけにはいかないのでと言っていたらしい。

そして“私は殿下にちゃんと婚約破棄されて見せます!”と宣言したらしい。

正直意味がわからない。

意味は分かるがわからない。

想定の斜め上の思考を持っているようだ。

それでも彼女の姿が頭から離れない僕は相当彼女に惚れてしまっているのかもしれない。

変装してたから向こうは僕だと知りもしないだろうが関わったほんの少しの時のやり取りすら鮮明に覚えているのだから…



「ちなみにさぁ頓珍漢な方向に努力し始めたって何しだしたの?」

「近いうちに娘がここに来て殿下とお会いになるじゃないですか。」

「その予定だね。」

「その時に殿下にとてつもなく性格の悪い女性だと思わせ婚約を考え直そうと思わす考えらしいです。」

「…意味はわかるけど彼女がここまでする意味が全くわからない。本当に理にはかなってはいるけどかなり変わった方向に努力しているようだね。」

「そうなんですよそこで殿下。失礼ですが私はあなたの熱意を聞いて仕方なく…非常に変わっていますが大切な娘を信頼して預ける訳ですから…」

「すぐに渡してくれてもいいよ?」

「渡しませんしそれにいろいろな意味で可愛い娘にとって危険なので絶対に嫌です。」

「残念だなぁ。」

「とにかく今はそう思っておられるかもしれませんがもし娘に対し気が変わったなどと仰った時は…」

「そんな軽い気持ちでこんな面倒なことすると思ってるの?」

「はぁ…確かにそうですね。殿下も娘に負けず劣らず変わって…」

「何かなティファニー公爵閣下?」

「いえ何でもありません。」

「ならいいよ。彼女に話さないでね。」

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