7.辞書をお貸ししましょうか
「シャル!あなたのオススメのお店はどこですか?」
「私ですか?あっ!あそこのお店のケーキはとても美味しかったですよ。」
「この前そこに連れていった時あんまり好きじゃありませんとか言ってなかった?」
あ…
しまった…
***
何故私は今殿下とジュンシー様と共に商業地区にいるのでしょう。
殿下に例のごとく誘われて来たのですが何故かジュンシー様がいらっしゃいました。
「ごめんね。せっかくあなたとの逢い引きの予定だったのに。」
「ジュンシー様がいらっしゃるのはいいのですが…逢い引きの意味を辞書で引き直されたらいかがですか?」
「じゃあデート?」
「そこではありません。」
「えーっと"逢い引き"ってどういう意味の言葉なんですか?」
『ジュンシー覚えなくていいよ。それよりどこ行きたいの?』
「?リヴィ焦ってるんです?あぁ!そういう事かぁ~。」
焦って言語変わるものなんですか?
ジュンシー様なんで嬉しそうなんですか?
殿下に何か仰ったようですが声が小さく聞き取れません。
殿下の笑顔が少し固いような?気もしなくもないですね。
何かお2人でお話されておりますし私居なくてもいいんじゃないですか?
殿下だけでしたらどうやって破棄に持ち込むための嫌味とか性格の悪い演技とか出来ますけどお客様がいらっしゃる前でする訳には行きません。
それにそこで殿下にいい印象とか与えたくないですし王族の話相手など疲れるので正直嫌です。
結論として私は帰りたいです。
「私が王族という高貴な方々の中にいるだなんて心苦しいですわ。本日は誠に残念ですが置いたまさせて頂きたいのですがよろしいですか?」
何故止めるんですか?
連れていくんですか?
話しかけるんですか?
***
そして今…
前回の演技のボロが出てしまいました。
いつもは気をつけているんですよ!
でもですね!
今日はそういう性格悪い?高慢そうな?わがままな?演技はしてないんです!
だからそのボロが…
「殿下とご一緒した時に頂いたものがあまり好みではありませんでしたの。別の日に侍女が買ってきてくれたものは美味しかったですわ。」
く、苦しい…
でも、おかしくはないはずです。
実は殿下とご一緒した時に頂いたのが1番好みのものでしたがそれは秘密です。
とゆうかそんなこと気にしてないでしょうしそこまではいいでしょう。
「ねぇシャル。」
「は、はい。」
「リヴィと行ったことないお店でオススメのお店とかある?」
「殿下と?ですか?……貴族があまり行くような場所ではないですが…よろしいでしょうか?」
「もちろん!」
***
「こちらです。私実は料理などにも興味がありまして…貴族がやるような事ではないとわかってはおりますけど…その…こっ、こちらのお店は他では扱っていない食品も置いてありまして…」
連れてきたのは平民向けのお店が多く、特に食品でも珍しいものを平民でも届くほどの値段で扱っているお店です。
殿下は珍しく驚かれたのか目を見開いておりますし、ジュンシー様はぱちぱちと瞬きをしています。
つ、連れてくるんじゃなかったです…
『…………れない…』
え?なんとおっしゃいました?
『やはりシャル…あなたのような素晴らしい女性を我が…いてっ』
『人の婚約者に何するの…』
あのー。ジュンシー様?いつまで私の両手を握っておられるのです?
「あのー。そろそろ手を…」
「あぁ!これはすまない。でも滑らかで綺麗な手ですね。ずっと触っていたくなるほど。」
「ありがとうございます。侍女やメイドが頑張ってくれているからですわ。」
笑顔笑顔。忘れてはいけません。
「あなたは料理もするの?」
ピキっ。笑顔が引き攣りそうです。
貴族なのにとか考えたらおかしいですよね?わかってますよ!
でも好きなんです!
追求しないでください!
「するという程ではございません。家の料理人の凄さがわかりますわ…私にはとてもあれ程のものを毎日…無理ですわ。」
なんですかその目は!
やめてください!
何だかいたたまれなくなるじゃないですか!
「よかったら今度何か作ってよ。」
嫌ですよ!
体調崩されたら私のせいじゃないですか!
そんなのお断りですよ!
「えっ!ずるい!私にも作ってくださいよー。」
なんでジュンシー様まで!
余計に無理ですよ!
「お2人ともお心遣いは嬉しいのですが王族の方々が口にするものを作るなど私には荷が重いですわ。それに体調を壊されたりした場合に私では責任をとる事が出来ませんので、慎んでお断り致します。」
にっこりと笑顔を作ります。
お2人して不貞腐れたような表情はやめてください!
そこまで気を使って頂きたくないです!
あ、殿下にゲテモノでも送ったら嫌で婚約破棄してくださいますかね?
…やめておきます。
これで毒を盛ったなどと言われては困りますので。
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