6.一応って言葉をご存知で?

殿下が身体を壊されてから約1月が経ちました。

その間平和で平和で仕事の手伝いとたまの休日を楽しく過ごしていました。

あれから!一切!音沙汰無しです!

きっと意中の方に夢中で私のことなど頭から抜けているのですね。

私にキスを落としたり胸を触ったことなど忘れてしまうくらい!

もうこれで不仲の噂でも流れて破棄にならないですかね。


そしたら楽なのに…

なんですか急いで…

はい?は?え?



***



平和とは突然壊れるものなのですね。

殿下だけでも荷が重いというのになぜ他国の王族が目の前にいるのですか?


『ただいまご紹介に預かりましたシャルロット・ティファニーと申します。俊熙 ジュンシーレイ殿下。お会いできて光栄です。』


にこりと笑顔を作ります。


『よろしくね。気軽にジュンシーって呼んで?あなたのように可憐で美しい方が我が国の語学にまで堪能とは…才能ってある所にかたまっているんだね。シャルと呼んでも?』


整った顔立ちでお世辞ありがとうございます。

語学はできるだけ多くの国のものを覚えようとしているのです。


『ジュンシー殿下ですね?ありがとうございます。ジュンシー殿下のような方に愛称で呼んでもらうなど恐れ多いことですが嬉しいですわ。』


あぁ…王子って整った顔立ちじゃなければなれないのかしら?

焦げ茶の髪とヘーゼルに輝く瞳に色の異なる肌…

自国の殿下とは違う美しさを放っています。


『んー。殿下って言うのも外して欲しいかな?周りにも昔からそう言ってるんだ。それに…シャルみたいな美しい女性から距離を置かれているように感じるのは悲しいから。』


近っ!

何故慣れた手つきで私の頬に触れるんです?!

まぁ笑顔は崩しませんしそれがお望みならばそう呼ばせて頂きますけど…


『分かりましたジュンシー様。』


殿下…何故顔は笑っているのに目が怖いんですか?

他国の王子殿下相手ですよね?

私何も不手際など起こしていませんよね?



***



殿下とジュンシー様は幼なじみらしいです。

国同士が仲いい証拠ですね。

やはり平和は素晴らしいだから帰らせてください!

ついでに婚約破棄してください!


ジュンシー様はこの国の言語も話されるそうです。


「でも今まであんまり覚える気がなかったから雑なんですよね~。ほら敬語が混ざっちゃうんですよ。でもこれからはちゃんと覚えようかな?こんなに素晴らしい方とお逢い出来たことですし…」


そう言うと私の手をとり甲にキスを落としました。

お世辞の度が過ぎるとわざとらしさが倍増しますよ?


「私もジュンシー様のような素晴しい方とお逢い出来たことに感謝しておりますよ。私は言語を覚える時に敬語の言い回し以外も覚えますが敬語しか使うことがないのが少し悲しいんです。」


『やはりあなたは理想の人だ…』


え?


「シャルロット・ティファニー嬢。私と婚約しいつしか結婚してくれないか?」


は?


「何言ってるのジュンシー!彼女は僕の婚約者なんだけど!」


殿下が会話?に入ってきてくださいましたがその婚約者の前には一応・・を付けてください。

それに殿下との婚約もさっさと破棄して頂きたいですが他国の王族とこれ以上繋がりは作りたくありません。

私の婚約がなくとも公爵家のバランスが崩れかけているというのに殿下かジュンシー様と結婚したら崩壊です。

最高で我が家が国家転覆企んでいるだの言われて没落。最悪戦争か国の崩壊です。

そんな危ないですしいやなので私は伯爵位から下の位の方…いっその事平民の方と婚約を望んでいますので。

ただ王族からの婚約申し込みなど断れるわけがありませんのでこうやってずるずるとしたままなのではありませんか?


そんなことをぼーっと考えていました。


だってお2人の話聞いていても意味はわかりますけど理解できないんですもの!

私が頭が悪いとかの問題ではなく何故私なんかにお世辞を言っているのかが!


「あなたは結局誰と結婚したいの?」


そしてそこでなんで私に振るんですか?!


「私は…」


言っていいのですか?

一応ですが殿下と婚約をしています。

それなのに他の…

伯爵位から下の位の方か平民の方と結婚したいと考えております。


なんて言っていいのですか?不敬ですよね?

いや今までの嫌味諸々も充分不敬ですけどね!

いやでも今はお客様の前ですし…

殿下だけでしたら言ってましたね。

悩んでいると殿下の声が聞こえました。


「珍しい…」


ん?何がですか?


「まだ望みはありそうですねシャル?考えておいてくださいね?」


え?ジュンシー様?

考えるって婚約をですか?


「望みなどありませんよ。彼女と僕は婚約してるので。」


「でも妙に距離……」

「………」

………



***



無駄に疲れました。やっぱり平和がいいです。

非日常など求めたくないです。

もう最後の方何言ってるのかよく分からなかったので適当に流していましたが。

王族に失礼?今更ですよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る