第59話 虚神
私の金色の髪が、一層明るく光を放つ。毛先が赤熱化する。その時、暗くなりかけた地平線の向こうから、透明な羽根を震わせて、直径10メートルはある、赤い円盤たちが4機飛来した。
「ヴァーミリオーネ……
ヴァーミリオーネたちも、私の声を流し始める。そして、私は静かに呟いた。
「友達さ。だから、彼女が真実を知る前に、止めさせてもらった」
「それで、あのタイミングだったんだね。私の懺悔の邪魔をした……!」
大音量の中でも、私の声はかき消されることなく、
「
「違う。私は
「本物の関係って何?
ヴァーミリオーネたちが
「彼女がそうしたいなら、私は許されなくたっていい!」
先陣を切るヴァーミリオーネの前肢をかわし、装甲を蹴って、
「あなたは、
「
「それは
「
「そんなの、
「間違ったっていいじゃない! 人類を滅ぼすという大間違いに比べたら、そんなの大したことない失敗だよ」
「あなたたち人間はそうかもしれない。でも私は、特定の人間と関わってはいけない存在なんだよ。それを破った時点で、やっぱり悪魔になるしかなかったんだ!」
「あなたが贔屓したって、
「それでも、
「そんなこと気にする必要はない! それに、決まりを破ったのなんて、ただの変化に過ぎないよ。あなたは、あなたが好きなように変わっていいんだ。悪魔になんて、本当はなりたくないんでしょ?」
「私だって、もっといい方法があればそうしている。でも、ダメなんだよ! みんな平等じゃなきゃダメなんだよ……」
「みんなが平等にって、目標が高いのはいいことだけど、それで目的を違えてはいけないよ!」
「そんなこと言われたって、もう嫌なんだよ! 人の心が傷付くと、私も苦しいんだよ! こんな感情に苦しめられるのは、もう嫌なんだよ!」
「やっぱりあなたは変わってない……他人のことで苦しむあなたは、傷付いた人の痛みがわかる、優しい神様なんだよ! 苦しいなら、私が一緒にいてあげる。私が
「たかが人間のくせに、何ができるっていうの? そもそも、私が苦しむことになったのは……
「な、なんですって!?」
ヴァーミリオーネの腕に払いのけられた
「私は人間を模倣しているだけの、意識も感情もない、からっぽの神様だったんだ。それをあなたが変えてしまった! あなたが私に優しくなんてしたから、私は本当の感情を知ってしまった。あなたに出会わなければ、こんなに苦しむことなんてなかったんだ!」
「私が、
「あなたはもともと、念動力の高い素養を持っていた。だから、私の精神的な障壁を突破できたんだ。私は人と関わっても、すぐにうまくいかなくなる。それで正しかったのに、それで苦しむことなんてなかったのに、あなたは私と良好な関係を築いた。私は幸せの味を知ってしまった。あなたの力は私に感情を授けたんだ! それさえなければ、
私を見上げる
「
「あなたは念動力そのものだ。肉体をいくら破壊しても、殺せやしないよ。さあ、おとなしく眠るんだ」
ヴァーミリオーネの前肢から
「
「こんなの、録音したデータだ! 本当の
瞳に輝きを取り戻した
「
怒りに我を忘れた
「うおおおおおおっ!!」
飛び立とうとするヴァーミリオーネ2機に、
「
炎に包まれ、煙の中から現れたのは、無傷の
「私は眠らない。
「
私の髪と目は、再び光を放つ。すると、夜空の向こうから、さらにもう1機のマクロボが飛来する。
「ステラソルナ……!」
ステラソルナが突き出した両腕を、両手で受け止める
(
「いけっ!」
「まさか、ステラソルナを念動力で操ったというの?」
急降下する間に、私のダッフルコートは風で剥ぎ取られた。全裸になった私を、
「
私に気を取られた
「そんな……こともできるの?」
私の視線の先には、空中で静止したステラソルナがいた。そして、
ドォーーンッ!
ステラソルナのバッテリーが突如爆発した。
バタッ……!
力を使い果たした
「はぁ……はぁ……」
彼女は、半開きの口からよだれを垂らしながらも、念動力を振り絞って、意識を保っていた。私は彼女の横に横たわり、その耳へと唇を近付ける。直接私の声を聴かせれば、
「えっ!?」
気付くと視界は不明瞭だった。居るはずの
「もごっ! もがっ!」
声を出すことができない。目の前は真っ暗だ。もがく私を抱きしめていたのは、
「
私を乗せていたマクロボ、最後の1機も、
「ねえ、
でもね、もう忘れられないんだ。あの病院で
私が存在する限り、私はあなたを求め続ける。でも、それじゃいけないんだ。
私はあなたに苦しみを教えてしまった。その罪をあがなわなければならないんだ。
あなたが存在し続ける限り、あなたは苦しみ続ける。それは、人類すべてが滅んで、あなたひとりになっても同じ。だって、私と……ううん、人と関りを持つ幸せを知ってしまったんだから。それを失ってしまったら、あなたはここで、悲しみに暮れなければならない。
あなたこそ、もう苦しむ必要はないんだよ。だからね、私があなたを存在することから解放してあげる。
人の心を知ったかわいそうな神様、あなたをからっぽの神様、虚神に戻してあげる。
私は、あなたと一緒に居たいという、自分の意思に逆らって、あなたを私から永久に奪うの。それで、おしまいにしましょう」
「ぐぁっ!」
「ごめんね、
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