第54話 復興支援活動
「今日も一日、ご安全に!」
「「「ご安全に!」」」
12月初頭。寒風吹きすさぶ中、
「それでは、これから食料の配給を始めます。みなさん、こちらの列にお並びになって下さい」
「あれは、
小さく口に出した
「……はい、もしもし、
スマホの着信に応える
「おお、繋がったか! 久しいな。私だ。
「博士、お久しぶりです。『くばるーん』、動くようになったんですね」
「ああ。この電話は『くばるーん』を介した通信だ。まだ、通信網は復旧していないからな」
「はい。その件は、
「そうか。『くばるーん』のカメラに、見慣れた作業着がたくさん映ってると思ったら、そういうことだったんだな」
「ええ、それで、『くばるーん』が動いているということは、『モルフォ』が?」
「いや、『モルフォ』はもう存在しない。研究所もデータセンターも、あのプラントも、すべて崩壊しているようだ」
「そうでしたか」
「お前、本当に何も知らないのか? いくら
「いえ、本当に何も知りません」
「まさか、プラントの……いや、アレが勝手に暴走してやったとでもいうのか?」
「わかりません」
「ふむ、要領を得ないやつだな。ともかく、私は無事で、『くばるーん』を制御するシステムは復旧した。これから
「わかりました。お互いがんばりま……」
その時、電話口の向こうで争うような声が聞こえた。
「今は電話中だぞ! え? いや、
「
「……あなたが
「はい。あなたはどなたでしょうか?」
「私は
「そ、それはありがたいことですね……」
「私たちのドローンなら、運搬作業や、人が入りにくい場所でも活動できるわ」
「なるほど」
「それと、うちの社員たちも被災地に向かわせるわ。遠隔で自由にドローンを飛ばせるほど、通信網は復旧していないもの」
「わかりました。お受けしましょう。ご協力に感謝します」
「こちらこそ、受け入れてくれてありがとう。じゃあ、博士に返すわ」
少しの沈黙の後、電話から
「……すまない。せっかちなお嬢様でな」
「会長って呼びなさいって言ってるでしょ!!」
「博士、
「ああ、今出て行った。あのお嬢様は
「その方が、よろしいでしょうね」
「
「はい。娘さんに父親の罪を負わせるわけには、いきませんからね」
こうして、
「では、我々はこれで失礼します。
「は、はい……」
時間は18時丁度。ぞろぞろと解散して行く、
「また来週って、俺たちはまだ帰れないし、明日も仕事なんだよな」
それに同調する声が上がる。
「まったく、この緊急事態に呑気な奴らだよ。9時に来て、12時から1時間休憩して、18時きっかりに帰りやがる」
「まあいいさ。俺たちは
「でも、本来あれが普通なんじゃないかな……」
小さく呟いた男性に、年上の男性がにらみを利かせる。
「なんだって? あんな奴らに合わせろっていうのか? 大体、
「すみません……」
「さ、喋ってないで、もう一仕事、頑張ろうぜ!」
「ああ、まだ瓦礫が散らばってて危ねえからな。このビルの割れたガラスも、今日中に全部撤去しちまおう」
「おう!」
「明けましておめでとうございます」
そこは、
「今年もよろしくお願いします。皆さまとこうして新年を迎えられて、とても嬉しく思います。まだ、この街の復興も完全とは言えませんが、人々は着実に元の生活を取り戻しています。もう一息、頑張りましょう! それでは、乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
1週間後、
「ご無沙汰しております。『ドローンドール』、プロデューサーの吉田です」
「吉田様、ご無沙汰しております。お元気そうで」
懐かしい声に、
「
「なんと、気付かずに申し訳ありません」
「いえ、陣頭指揮を執っている
「すみません。それで、今日はどんな御用で?」
「ああ、それがですね、『ドローンドール』が、4月から放映されることに決定しました」
「そんなに早く? 放送しても観られない方々もいるのでは?」
「いつまでも自粛自粛と言ってられませんからね。大丈夫です。放送後1年間は、
「どなたがですか?」
「お嬢さ……
「な、なるほど。わかりました。それで、
「変更はありません。それもまた、
「そうですか。では、アフレコも終わっておりますし、あとは放送を楽しみにするだけなのですね」
「はい。それで、折り入ってお話があるのです」
「なんでしょう?」
「
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