第50話 秘密基地
「うん、大丈夫。私は、マクロボさんや、モルフォさんと心中する気なんて、さらさらないよ」
ようやく辿り着いたモルフォの研究施設。そこは山肌にある洞窟で、内壁はコンクリートになっていた。道は迷路のように入り組んでいる。内部構造の地図を持っている私でも、現在地を見失いかねなかった。
「モルフォさんがある部屋はもっと先みたい。こんな秘密基地を作ってたなんて、
私の言葉に、
「ここはマクロボのプラントもあるんだ。慎重に進まないと」
しかし、慎重に進んだところで、どこでマクロボに出くわすかわからない。私と
ズズズズシーン!
天井に張り付いていたマクロボ4機が、落下してステラソルナの行く手を阻む。気付いた時には、
「うぉりゃぁぁぁぁっ!」
ステラソルナの正面、ふたつのライトが照らす中、マクロボにキックやパンチを見舞う
「はぁはぁ……これで全部?」
「ちょっと、
「何言ってるの? 本気でやらなきゃ、こっちがやられるかもしれないんだよ?」
「でも、マクロボさんたちだって……」
そう言いかけた時、私は、いや、ステラソルナの後ろ脚が、何者かに掴まれた。
「うわっ、み、
振り向いた
「
ステラソルナは脚を踏ん張るが、ずるずると、通路へと引きずり込まれて行く。その瞬間、目の前の
ガィン! ジジジジ……ボッ
不吉な音がする。その方向をみると、火花が散っている。潰れて折り重なった2機の腕は、未だステラソルナの脚を掴んでいた。
チュドーン! ドゴゴーンッ!
私はその時、これが最後の瞬間だと諦めていた。しかし、私の身体は、ステラソルナから前方に放り出され、宙を舞っていた。
「てっ!」
床に転がり、私は軽く身体を打ち付けた。痛みをこらえながら、私はステラソルナを見る。すると彼は、目のように光る、前方のふたつのライトを点滅させた。
「さようならって、そんな!」
私にはなぜか、彼がそう言っているように見えた。そして、ステラソルナの背後で、バッテリーの連鎖爆発が起こる。ステラソルナのバッテリーも、その爆発に巻き込まれるのであった。
「ステラソルナー!」
しかし、私はもうひとつ、大事なことに気が付いた。
「み、
燃える炎の中で、人影のようなものがうごめいてる。それは、徐々にこちらに近寄ってくるのであった。
「
それは、ボロボロになった作業着を纏った
「
倒れたまま
「
「ん? 私は
その瞳の輝きは、この世のものと思えないほど、美しい青だった。
「だって、爆発に巻き込まれたんでしょ?」
しかし、
ゴゴゴゴゴ……ドザァァアアアアアッ!!
「爆発? ああ、運が良かったみたいだよ。でも、工場長のジャケットが、お釈迦になっちゃった。きっと、私を守ってくれたんだね。フフッ」
スマホの明かりの中で笑う
「そ、そうなんだ。でも」
「あーあ、帰り道、塞がれちゃったね」
後ろを振り向きながら言った彼女は、何故か、嬉しそうな口ぶりだった。
「と、とりあえず、先に進んでみよう?」
私は
「ダメだ。ここは行き止まりだったんだ」
私は壁を前に膝から崩れ落ちた。
「有事の際に、攻め込まれにくく作られてるんだね」
「何言ってるんだよ。このまま私たち、ここから出られないかもしれないんだよ?」
私は涙ぐみながら、
「大丈夫、きっと、
当然、スマホには圏外と表示されている。
「そう、なのかな? スマホは使えないみたいだよ」
「うん、とりあえず、スマホの充電を無駄遣いしないように、電源切っておこ?」
「うん……」
そうして、辺りは真っ暗闇になった。私は行き止まりの壁を背もたれに座り込む。隣に、
「少し休もうよ? 今、
「……わかったよ」
暗闇の中でしばし無言になる私と
「ねえ、
気が遠くなりかけてた私に、
「な、なに?」
「どうしてこんなことになっちゃったんだろうね」
「ど、どういうこと?」
「ごめん、なんでもないよ。ねえ、台風、もう止んでるんじゃないかな?」
「わからない。でも、それならそれで、いいんじゃないかな」
再び黙り込む私たち。それから、どれだけ時間が経過しただろうか。私は自分が眠っているのか、起きているのか、それすらわからなくなっていた。
ぶるるっ
微かな音を立てたのは、私の身体だった。
「寒い……」
私の身体は、コートを羽織っているものの、徐々に体温を奪われていた。
「
私のコートの中に、
「これで、あったかい?」
わからなかった。
「あ、これ、なんだろ?」
「
「ありがと。思い出した。それ、私が
「ほんと? ありがとう!」
この非常事態に何を喜んでいるのか、私には彼女の心情が全く理解できなかった。
「だから、
「私はいいよ」
「なんで?」
「なんかさ、私、もうずっとこのままでいいかなって思うんだ」
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