第49話 樹海の影
私たちはステラソルナに乗って、山を越え谷を越え、モルフォが待つ、その場所へと辿り着いた。
「この辺は、
「だから、
「そう、最初は自分が育てたお茶を世界中に提供したかった。それだけだったんだよ」
「うん……あ、ねえ、
「そう?」
気付けば、あれだけの嵐の中を進んできたというのに、そこには静かな空気が流れていた。
「いや、違う。ここがあの嵐の中心なんだ」
見渡してみれば、真上は晴れ渡っているが、360度、分厚い雲に囲まれている。鉛色の雲は、目に見える速さで私たちの周りを回転していた。
「
目の前には富士山がある。どうやら台風の中心は、その頂上らしい。そして、山肌のどこかに、モルフォを擁する地下研究所への入り口があるのだ。
「待って!
「どうしたの?」
「なんか、変な音がしない?」
「
「やっぱり、誰かいるみたい」
「誰かって、こんなところに誰がいるっていうの?」
「わからない。だけど……うわっ!」
突如通信が途絶える。私は、
「
そこには、1機のマクロボと取っ組み合いをする
「
そう口にしながら、マクロボと互角の力比べをする
「く、来るな……!」
次々と
「み、
私はステラソルナを操って、
「
私は恐怖に慄いた声を上げ、カメラで
「
そして、マクロボの指が、ステラソルナに触れようとした時、それは起こった。
「ああああああああああっ!」
耳をつんざくような
ガッシャーンッ!
バラバラに砕けるマクロボの身体。
ガンッ! ガンッ! ドォッゴゴーォオンッ!
一瞬のうちに、8機ものマクロボを打ち砕いた
「
燃える樹海。煙の中からゆっくりと、私とステラソルナに近付いてくる影。それは、私が名前を呼んだ人物だった。
「
笑顔を向ける
「ねえ、
さっき見た
「怪我? そんなのしてないよ? やだなぁ、
「そ、そうなんだ。それより! さっきのマクロボさんたち、
「そうだよ。
そして、コクピットの中に戻ってきた
「
「う、うん、
無理に笑って見せる私。機体の中にずっといたんだから、私が無事なのは当然だ。
「外、寒かったよ。
「うん……」
私は
「でも、なんでマクロボさんたちが外に居たんだろうね?」
「さあ、もしかしたら、ここに戻った
「そんなことがある?
「わからないよ? モルフォのところまで行って、気が変わったんじゃないかな」
「そんな……」
「一度は世界征服を企んだような人なんだよ?」
「それは、私の力が……」
「だから、そんなものはないし、台風も偶然。でも、
「
「違うよ。人は、悪いことを企んだ時点で、潔白には戻れないんだよ」
「そんな、そんなのひどいよ。私だって、この世界が滅んでしまえばいいなんて、何度も考えてるよ?」
「それとこれとは話が別。ほら、目的地は近いみたいだよ」
そこには、山肌に空いた洞窟があった。地図は、そこがモルフォの研究所であり、マクロボのプラントであることを示していた。
「うん。でも私、納得いかないよ」
「今はもう考えないで。あの洞窟から、私たちを拒むマクロボたちがやってくるかもしれないんだよ?」
しかしそこは、ステラソルナを迎えるかのように、風が入り口に向かって流れていた。
「いや、きっとモルフォさんは待っているんだ。なんでかわからないけど、やっぱり行かなきゃならないんだよ」
私の言葉に、
「
「うん、大丈夫。私は、マクロボさんや、モルフォさんと心中する気なんて、さらさらないよ」
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