第44話 その責任は
「みなさん、とりあえずここを出ましょう。あの金髪の女の子について行ってください」
私が言うことを、みんなすんなりと受け入れてくれる。ぞろぞろと部屋を後にする人たち。それを見送る私と
「あの人たちはきっと、みんないい夢を見ていたんですよ」
「そ、そうなんですか?」
悟り切ったような私に、
「ええ、私と同じように、荷物を配達して、お客さんたちの笑顔に迎えられて。だから、真実を知ってもいいことはありません」
「面目次第も無い」
「ふふ、まあ、首の後ろのポートは外してあげてくださいね。でも、またモルフォさんに戻りたい人もいるかも? みんな、あそこが心地良かったんです。だから、モルフォさんのフォローも難なくこなせた。言うなれば、モルフォロワーさんです」
「女神……」
「だーかーら、違いますって。私はただの
「
「それは私も同じです。これから、どうしますかね。モルフォロワーのみなさんを見てたら、力が抜けてきました」
「ううむ、
「私、もう、四捨五入すると30ですよ?」
「えっ!?」
「25歳です! あれ? 26だっけ? えっと、私いくつだったんだろう……」
ニート生活を送り、長期間眠っていたことにより、私は自分の年齢がわからなくなっていた。
「ほほう。それでは、うちの娘とほとんど変わらないですね」
「娘さん、いらっしゃるんですか?」
「はい、とてもかわいい娘で……と、本人に聞かれると怒られるのですが、今は会社を手伝ってくれています。社員たちの人気も高いんですよ」
「ほぉ」
「娘は
「是非、お会いしたいものです」
「友達になってあげてください。ですが、娘は私がここでしたことを知りません。だから、娘や他の人間には、秘密にしておいてくれませんか? すべての罪は、私のものですから」
「だから、私も悪かったって言ってるじゃないですか。娘さんに黙っておく件は、承知しましたけど」
「でも……」
「でもじゃありません。この間、
「しかし……」
「
それは、部屋に戻って来た
「
「
「はい。私は、私なりの償いをします」
「それで、ここに居た人たちについていた機械ですが……」
「すみません。それを外すには、手間がかかりまして。皮膚の上から脊髄に、針を何本か刺しているので、慎重に作業しないと」
「はい、順を追ってまいりましょう。彼らはそれほど気にしていませんから。精神は非常に安定しているようです」
「本当に申し訳ありません」
「済んだことをああだこうだ言っても何も解決しません。今は前に進むことだけを考えましょう」
「わかりました」
そして、私は
「
「どうって……」
「まさか、軍事利用をお考えになっていたのでは?」
「参りましたな。否定できません」
「あの子たちも、平和的に利用されることを望んでいます。人のために作られたんだから、人を傷つけたいわけがありません」
「ははは、あなたは機械の心がわかるのですか?」
「あはは、そんな気がするだけです。でも、あの子たち、丸くてかわいいし、軍事利用なんてもったいないですよ」
「かわいいですか。それは嬉しいですな。マクロボのデザインは、私が考えたものでして」
「そうだったんですか!」
「昔から昆虫が好きで、6本足のロボットを造りたかったのです。ボディは親しみやすい丸形にして……でも」
「でも?」
「娘に一度だけ、設計図を見せたことがあるのですが、『かわいくない』と一蹴されてしまいました」
「あははっ、気の強い娘さんなんですね」
「娘には嫌われたくないので、このことはくれぐれも内密に。頼みましたよ」
「わかりました」
にこやかに会話を交わす私と
「あの、私はそろそろ失礼しますね。
「うん、わかった。
「そうですね。
「はい。
「その節は、本当に申し訳ない……」
「あははっ、なんか
「業務提携の話、やはり、なかったことに致しましょう。それから」
「それから?」
「
「望むところです」
そして、私と
部屋でパジャマに着替え、ベッドに横になる私。しかし、ぐっすりと眠った後だからか、妙に意識が冴えていた。
(私がモルフォさんとしたこと、取り返しなんてつかないよね。
横になったまま、自責の念に駆られていると、コンコンと、扉をノックする音がする。
「はーい」
扉を開けると、巫女装束に着替えた
「
「た、ただいま」
「み、
「もう、私のことを忘れないように……」
「ごめん、ごめんってば、もう忘れないから」
「そっか、じゃあ、よかった」
「でもね、人は忘れた方がいいこともあるんだよ」
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