第39話 陰謀論
8月下旬。
「無事に退院できてよかったわ」
「はい、お陰様で。それで、捜索の方はどうなりましたか?」
「わかっているわ。今日はそれを伝えにきたの。でもね、えっと、あの、なんて言ったかしら?」
「
「そう、その、
「そうですか」
(
なぜか少し上機嫌になった
「でもね、最近、似たような話がよくあるみたいなの」
その展開を予想していなかった
「どういうことでしょう?」
「日本中でね、ある特定の人たちが、行方不明になっているらしいの」
「特定の人たち?」
「うん。調査によると、行方不明になる人はみんな、ある通販サイトに登録していたの」
メルリアは窓の外、上空を仰ぎ見る。視線の先には、商品を配送するドローンが飛行していた。
「あれは『くばるーん』とかいう……確か、
「くばるーん」とは、配る風船を意味する、球体に四枚のプロペラがついた配達用のドローンだった。
「そうよ。
「
「それがね、行方不明になった人は、
Qスコアは、通販サイトの
「まさか、
「そうよ。
「ただの偶然ではないのですか?」
「偶然にしては偏りすぎている。人為的な力が働いていると考えるのが妥当ね」
「なるほど。しかし、いち民間企業が、調査されれば嗅ぎつけられてしまうようなリスクを冒しますでしょうか?」
「そのリスクに見合うだけの、メリットがあるとしたら?」
「Qスコアが低い人を集める価値があるんでしょうか?」
「そうね。考えすぎかもしれないわ。ごめんね。でも、
「はい。それはわかっています。すみません、調査してもらっておいて、失礼な言い草でしたね」
「謝る必要はないわ。引き続き、調査は任せてちょうだい。あなたはとりあえず、明日のパーティーに専念するといいわ」
「パーティーですか。うまく笑える気がしませんけど……」
「しっかり眠りなさい。気持ちの整理がつくってものよ」
しかし、久々に帰宅した
(Qスコアとは、個人の資質を数値化したもの。会員全員に可視化される代わりに、様々なサービスがある……)
(Qスコアが低い者には、無料で抹茶製品が提供される。ですか。そんなことをして、
(タダだからといって、
世界中で利用されている
これについて各国政府は、
(大量のドローンによる、円滑な物資の供給。それによって、
その続きは、紛れもなく陰謀論だった。
(
(今、テレビやネットは、
そして、
「みなさま、
ステージの前には、
「
「そうだそうだっ!
声帯が千切れんばかりに叫ぶ
「ふふ、ありがとうございます。しかし、休ませて頂いた分、これからも精一杯、職務に勤めさせていただきます」
そうして始まった、題して、「夏の
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