第38話 両親
「そう。そして、あなたが生まれたのよ」
「え? いま、なんとっ?」
素っ頓狂な
「……だぁからぁ、私はそこにあった同人誌を見てぇ、そこに描いてあることを彼と実践することでぇ、創作物は悪ではないと証明しようとしたのっ!それで、あなたのような優秀な娘ができたんだから、創作物に悪影響はないと証明できたようなものよねっ!」
「どうしたの、
気が遠くなった
「お母さま、私、本当のことを言います」
「あら、急にどうしたの?」
「私は、あの部屋に住んでいた人を探すために退院したいのです。お父さまのことは、ただの口実です」
娘のまっすぐな視線を受け、母は得意げに答える。
「ふふ、そんなことだろうと思ったわ。あなたが神主と総裁と声優の活動の合間を縫って、彼氏と半同棲してたなんてね」
一瞬後ろめたさを覚えて、
「いえ、その人は女の子です」
「あら、じゃあ、大事な友達なのね」
母のあっけらかんとした口振りに、
「そう、分かった。じゃあ、私がその子を探してあげるわ」
「えっ、どうやって?」
母の思いがけない提案に、
「ふふ、私の親衛隊『ナイト・メア』は、今でも私の命令を聴くのよ。
「で、でも」
「でもじゃありません。今はゆっくりと養生して、私たちに任せておきなさい。私と
「わかりました。お願いします」
その観念したかのような声に、メルリアは胸を張った。
「ふふん、わかればよろしい。すぐに見つけてあげるからね。あ、そうだ、ひとつ言っておくわ」
「なんでしょう?」
「
メルリアの目は真剣そのものだった。
「……はい」
メルリアは意気揚々と病室を出て行った。
「その話、する必要ありました……?」
誰もいない病室で呟いた
そして、
「
「はい、お父さま。お父さまが
「そうか、良かった。こんな私でもお前の役に立てるなんて、嬉しいぞ」
「はい。退院しましたら早速、
「そうか。でも、本当にいいのか?」
その時
「え?」
「いや、
「そう言われれば、そうですけど」
「遠慮しなくていいんだ。
「本気で言ってるんですか?」
「ああ、娘の心配をするのは当たり前だろう」
「いえ、私は大丈夫です。仕事はうまく両立してみせますので、お父さまはまた、私の補佐に回っていただければ」
すると、
「そうか、やってくれるのか! すまないが、適任者は
その時
「はい、ご心配おかけして申し訳ありません。これからはうまく休養を取って、倒れないように気を付けます」
「ああ、不調を感じたら、すぐに休むんだぞ」
「わかりました」
「では、早速だが、
「え、どうかと言われましても」
「なーに、ただ、
スマホの画面を見せつける
「そんなに早く?」
「ああ、みんな
「そうですか。ならば、私に拒否する権利はありませんね。しかし、随分と手際がよろしいことで」
「ははは、私も嬉しくてな。自慢の娘のためだ。なんでもするさ」
なんでもする。メルリアと同じ言葉を使う
「では、これからも全力で私のサポートをしてくださいまし」
すましたように、目を閉じ、上品に言ってのける
「おお、言うようになったな! まあ、任せておけ! では、私はこれから打ち合わせがあるのでな!」
(お父さまの、『私が神主になる』という言葉は嘘だろう。私、人が嘘をついてるのがわかるようになったんだ。人が嘘をつくとき、念動力の流れが変わる。これが、無意識の決定を意識が捻じ曲げているということ……)
彼女は確信に近い想いを抱いていた。
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