第29話 忘却と再会
高校三年生の私は、大学受験に失敗した。こうして、私と
(なんだろう、この感覚は……こないだの数学のテスト、96点だった。別に悪い点数じゃないはずなのに、この胸騒ぎはなんなの?)
その日
「どうしたの?
「……ああ、ごめん、気にしないで。大丈夫だから」
もう一人の友人が、
「ほんとに大丈夫? 今日、10月だってのに暑いよね。だからかな? ねえ、あっちの日陰を歩こうよ」
「そうだね。日陰……ヒカゲ?」
「あ、あの人!」
「
友人の言葉も聞かず、人混みをかき分けて、
「ヒ……あの!」
「……なんですか?」
「えっと、あなた……ひ、ひさしぶり!」
名前が思い出せないことに、笑顔が引きつる
「どなたですか? 私には、あなたのような知り合いいませんよ」
「
友人の声に反応することもなく、
「あの、私たち、友達ですよね?」
「何言ってるんですか? お友達ならあっちで呼んでますよ? 大体、私みたいな人間に、あなたみたいなリア充の友達がいるわけなじゃないですか? からかわないでください」
「え、だって、私、あなたの……」
「やめてください! 気持ち悪いです! 他人のメガネを触ろうとするなんて、頭おかしいんじゃないですか!?」
そう言って、彼女は
「……
「
「そんな……
人混みを見つめる
「もう、どうしたんだよっ!」
「ごめん、サキ、もう私、帰るね」
「え?」
困惑する友人たちを置き去りにして、
(
(
しかし、
(
「
「私は、何をしてたんだろう」
気が付いた時、
「ひっ!」
「はい、ごめんなさい。動くことができなくて……」
「おじいいさま、私、
「そうか。
「いえ、もうそんなことはどうでもいいのです。私は
しかし、
(あの子は私と同じ大学を受験した。でも、合格できなかった。それは、この世の中が平等じゃないから。学ぶ機会は誰にでもあってしかるべきなのに、あの子にはそれが与えられなかった。こんな不平等があってはならない。私は組織の力を使って、この不平等な世の中を正してやるんだ!)
そんな彼女の想いを知らず、祖父、
「ふむ、しかし、自分がやりたいことを諦める必要はない。神職の資格だって、今の大学を卒業してからでも取れる。自分のために生きるんだ」
「……わかりました」
(私が有名になれば、あの子の方から私に気付くかもしれない。今はそれに賭けてみよう)
しかし、
――そして、私が24歳を間近にした春、私と
「
「
「ごめん、
「ううん、謝らないで。
「いつから、気付いてたの?」
「私があなたにタダノートをつけろって言った時。あなたは自分でつけていたノートのことも忘れてたなんてね」
「あはは、なんでだろうね?」
「でもその時は、まだあやふやだった。夏に道端で怪物に襲われた時、名前を呼んだでしょ? あの時、思い出したんだ」
「そっか、それでか」
「でもね、正直その時に、もう会わないって決めたんだ」
「なんで?」
「私がまた、あなたを不幸にしちゃうんじゃないかと思って」
「不幸? どういうこと?」
「だけど、ホームページを作ろうと思ったら、また再会してしまった。それで、
「私、前にも同じこと言ってたんだね」
「うん、だから、
「あは、なんかそれって、嬉しい。ねえ、
「それはダメ……!」
「え?」
「
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