第五章 ふたり
第22話 はじめての出会い
「ほ、
私のマンションに突如現れた
「怖いですよ。
苦笑いを浮かべて冷や汗を流す私。
「
「え? こないだも同じこと……あ、また名前で呼んでくれましたね……あはは」
へらへらとする私に、
「変わってない、何も。10年前から」
「10年前? ど、どういうことですか?」
「やっぱり、思い出してくれないんだね、
「思い出すも何も、10年前は、15歳だから、高校に通ってましたけど」
「私だって、忘れてた。忘れたままならよかった!」
「えーと、いや、やっぱり何かの間違いですって!」
「
「え、ええ、去年の3月でしたっけ? 私たちが初めて会った……」
「その前、10年前にも言ったよね。それと、
「かほごぜん?」
「あなたが私に付けたあだ名だよ。過保護な御前様だから
その時、私の脳裏に浮かんだのは、高校の廊下と少女。記憶の中の少女は、目の前にいる女性と同じ、金髪碧眼だった。
(私、この人と……)
「そのメガネだって、私が!」
「
「
「
「目立つのは好きじゃないんだけどな」
「金髪に青い目してるくせに、今更何言ってんのよ。何もしてなくても目立ってるって!」
とある高校の一年生たち。彼女たちは、廊下に張り出された、中間テストの得点ランキングの前ではしゃいでいた。その中に、
「クラスメイトが学年一位だなんて、鼻が高いよ」
(数学の点数、96点だった。あんなところで間違えるなんて)
(あー、やっぱり。数学は一位取れなかったか。ちょっと悔しいな。一位はどんな人なんだろう? ……あ、この人、私と同じクラスの人だ)
(理数系だけ得意なのかな? どんな人なんだろう)
「あの、
控えめに呼びかける
「
急にびくんと跳ねあがる黒髪ショートカットの少女。恐る恐る振り向いた彼女が目にしたのは、
「やっとこっち見てくれた! ねえ、
「あは、ごめんなさい。それ、偶然です」
困ったように愛想笑いを浮かべた少女は、席から立ち上がり、
皆さんもうお気付きであろう。この少女こそが、高校時代の私、
「
「すみません、ちょっと忙しいので」
次の日も。
「
「朝礼、始まっちゃいますよ?」
また次の日も。
「
「あの、おトイレ行くので……」
そのまた次の日。
「
「……」
私は正面を向いたまま、聴こえてないふりをした。
「
「あ、あはは、ちょっと持病の
私はどこへともなく逃げ去った。私は何度声をかけられても、同じように愛想笑いを浮かべて
そうして一週間もすると、
「ねえ、
「
「
「ああ、ヒカゲちゃん?」
「ヒカゲ?」
そこに、もうひとりの生徒が割り込んできた。
「リカ、
「あ、ヨーコ、
「あー、なんかあの子、髪も目も真っ黒で、自分から喋ったの見たことないし、幽霊みたいで怖いんだよね」
「そ、そうなんだ。確かに目は真っ黒だったね。でも、クラスメイトにそんな言い方しちゃダメだよ」
「あははっ! 本人に直接言ってないでしょ! も~、
「もうっ、からかわないでよっ! こっちは真面目に訊いてるのに」
「ふふ、まあ、
リカさんは
「うんうん、ヒカゲちゃんに呪われちゃうぞ~」
両手を胸の前で構え、ぶらぶらとさせるヨーコさん。
「はいはい」
しかし
「あの、先生」
「ん、なんだ?
「えっと、
「なんだ、
「ええ~、先生なのにそんなこと言っちゃっていいんですか?」
「ははっ、いやすまない。とは言っても、俺も数学が得意な生徒だとしか……はっ、まさか
「あ~、まあ、現に数学では負けたわけですし」
「いいか
「そういうことじゃなくて! 性格とか、わからないんですか?」
「そんなに迫るなよ。でも、あんまり話したこともなくてな。数学が得意なんだから、頑張れば他の教科もいい点取れるかもしれんな」
「そうですか。何も知らないんですね」
「まあ、良かったらお友達になってやってくれ。いつもひとりで席に座ってて怖、いや、寂しそうだから」
「もう、先生なのにまたそんなこと」
「ははは~、あー次の授業だ! 急がないとー!」
それから
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