第3話

 ぼくは言葉に飢えていた。より正確に言えば、ぼくを認めてくれる言葉が欲しかった。大多数の子どもたちと同じだ。承認欲求と言われるものが、いっぱしの人間らしく、ぼくには備わっていた。

 ぼくは器用だった。できないこともあるが、できることも多い。そして、すべて中途半端に終わる。抜きんでることはできない。それが時に、ぼくをひどく苦しめた。小さな集団の中で一等賞を取ろうとも、より集団を大きくすれば、一等賞は失われる。集団が大きくなっていけば、いつかはぼくよりなにもかもが優れている人間が出てくる。それも、一人や二人ではなく、たくさん。

 わかりやすくぼくにのみ秀でたことを、ぼくはずっと探している。それは未だ見つからない。たぶん、一生をかけたって見つからない。ぼくの――いや、「わたし」の存在そのものがかけがえのないものなのだと、他人がいくら美しい言葉で飾ろうとも、それはぼくの中には届かない。ぼくより何もかも優れた人間がここにいたとして、同じ言葉をぼくにかけられるのか? ぼくを選べるのか?

 ぼくだけのものなんて、最初から最後までどこにもないのに、ずっと探し続けているぼくは醜い。生きているだけでいいなんて、そんなものは存在しない。ぼくが生きていたら、失われるものがたくさんある。ぼくのつまらない探求行動のために、死んでいくものがたくさんある。ぼくの飢えに意味なんてないのだ。こんなことをし続けるくらいなら、ぼくは早く消えてしまえばいいのに。

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