第16話 WOOHOOOOOOO!!!
目の前で和音と引き離された俺は、警備員に外に連れ出されてしまった。どうやら、俺は出禁になったらしく、もう一度建物に入ろうとしても、入口で止められてしまう。
魔王を片手に自分より数倍厳つい男に啖呵を切っていたところに、執事が慌てた様子でやってきた。
「ちょっと、将冴さん。何をそんなにもめているんですか」
「こいつらが俺を出禁にしやがった」
「は? ちょっと、落ち着いて。あれ? 和音さんはまだ来てないんですか?」
「和音がここの奴らに連れて行かれたんだ!」
「何ですって!?」
俺の言葉に驚いた執事。そして、厳つい警備員が執事に言った。
「貴方もこの方とお知り合いのようですね。今後一切、当店に出入りしないでください」
「は……?」
執事の眉間に青筋が立ったのが見える。俺の直感がヤバいと告げたので、彼を引きずってその場を離れる。
「ちょっと離して下さい。和音さんが中にいるんでしょう?」
「そうだが、俺の本能がアンタをそのまま放置したらとんでもないことになると告げたんだ。俺だってすぐにでも和音を取り戻したいが、武器も何もない状態だと戦えない。作戦を練るぞ」
「……わかりました。すぐ近くにバーがあったはずです。そこで作戦を立てましょう」
俺たちが大通りを出ると、目の前に馬車が止まる。そして、レッドカーペットが轢かれ、そこに大男がド派手な衣装を着て歩いていく。
どこかで見たことがある気がするその服は宝石がちりばめられ、彼が歩くたびに宝石が数個落ちていく。落ちるたびに近くの者が拾い、自身のポケットに入れていく。
大きな宝石が俺の足元に転がってきて、その石を拾う。どうやらダイヤモンドのようだ。
「おい、アンタ!」
俺の声が届いていないのか、そのまま歩いていく男。
「キラキラ光ってるアンタだよ! アンタ」
すると、男はピタリと足を止め振り返る。俺は石を見せ、「落ちてたぞ」と手渡すと、大男にぎゅっと手を握られる。ものすごい力だ。
「離せ!」
「なんて……。何ていい人なんDA! 落とし物を拾ってもらったのは初めてだYO! お礼をさせてほしいNA! あぁ、僕の名前はレリオ・バス! 世界一裕福な男SA!」
「どうでもいいから、手を離せ!」
「OH~~! ゴメンよ、ソーリー。でも、君はとっても親切だから、僕達友達になれると思うんDA!」
「いや、俺は今忙しいんだ。ってうわぁ――」
レリオに小脇に抱えられながら、馬車に連れて行かれそうになる。やっと騒ぎに気付いたのか、遠く離れた場所から驚いた顔をしている執事がこちらに駆け寄ってくる。
「将冴さんをお離し下さい!」
「ん? 将冴って言うんだNE! 君は将冴の友達かい?」
「いえ、友達では。うわっ―—」
執事まで小脇に抱えられ、俺たちは馬車に連れ込まれた。
「まったくもう! 私達をどうしようと言うのです!? こんな扱い初めてされました!」
走り出した馬車の中で執事がプリプリと怒っている。
「OH~~。おこらないでYO!」
「私達は和音さんを――」
「そうDA!!! いい子と思いついたYO! 実は僕、お忍びでこの国に遊びに来たんDA! 君たちも一緒にあそBO!」
「いや――」
「WOOHOOOOOOO!!!」
俺たちは話があまり通じないレリオという男に、この国のレジャースポットに連れまわされた。息もつかせぬスケジュールにくたびれた俺たち。やっと、レリオに話を理解してもらえたのは、彼の用意した自家用ジェット機に乗せられていた時だった。
「え!? じゃあ、君の弟さんはカジノのオーナーに捕まっちゃったってこTO~~!?」
「あぁ、そうだ……」
「WOW! 大変だ! どうして君達は今こんなところにいるんDA! 弟さんを早く助けにいきなYO!」
てめえのせいだと言いたい気持ちをぐっと抑える。
「……。だが、俺たちはあのカジノの出禁になっちまった」
「そうなんです。無理矢理入ることはできますが、世界銀行のおひざ元で騒ぎを起こすのは、私たちの本望ではありません」
「なるほDO……」
レリオはうーんと唸った後、電球でも灯ったように顔を明るくさせる。
「僕が連れて行ってあげるYO!」
「どこに?」
「もちろん、カジノにSA!」
「よし、そうと決まったら、これを背負うんDA!」
「何ですか? これは?」
「これは、パラシュートSA!」
――まさか、コイツ……!?
「早く弟さんたすけたいんでSYO! さぁ! 早くいこう!」
「いえ、私転移魔法が。ってうわああああああああああああ」
レリオに無理矢理リュックを背負わされた執事が、突如背後で扉が開いたドアから突き落とされていく。
「いやまてまてまて。おいオレが抱いている赤ん坊が見えないのか!?」
「大丈夫! ちゃんと君とグルグル巻きにしておくからSA!」
そしてコイツは俺にも無理矢理――
「うわあああああああああああああ」
「WOOHOOOOOOO!!!」
強烈な風圧のせいで、コイツをののしってやることもままならない。
――コイツ、ぜってぇぶん殴ってやる……!
俺はそう誓って、体験したことのない時速200キロを全身で感じていた。
◇◆◇◆
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