1.奇妙な招待状

「起きて!本人限定郵便だって」

「何それ?受け取っといてくれよ…。」

「免許証いるんだって!とにかく早く出てよね!」

「あ〜あ、もう少し寝たかったのに」と、ゆうきが荷物を受け取り、欠伸をしながら、リビングにいる裕美に近寄りグチった。「珍しくこんなに早く起きれたんだから見たいって言ってた映画でも見てきたら?」

ゆうきを起こした妹の裕美は一人のんびり寝そべってスマホを見ている。 佐々木家──といってもマンション住いの2人暮らしである。ゆうきは大学の為両親と離れて、1人暮らしをしていたが、そこに、高校を中退した裕美が転がりこんできたのだ。彼女がいる訳もないゆうきとしては、かわいい妹が慕ってきた事が何より嬉しかった。

そして正直わずかな仕送りとバイト代だけでは生活が苦しく、裕美の稼ぎは何よりありがたかった。

裕美は性格もよく、容姿もよいのだが、何を考えているのかイマイチつかめない不思議な雰囲気の女の子で、今は歌舞伎町のキャバクラで働いている。

そして──

「いったい何の荷物?」

「本人限定郵便なんてあるんだね。」

と不思議そうにゆうきの手に持っている荷物というか届いた封筒を少し見つめて、またスマホに目線を戻した。

「俺もはじめてだし…誰からだろう??」

といいながらも興味なさそうに机の上に半ば投げるように置くと、ガチっと金属の鈍い音がした。

「何入ってんの〜?」

とスマホから目線を外さず興味なさそうに裕美はゆうきに問いかけてみた。

「開けてみてーちょっと歯磨くから」

妹に見られて困る様な物が届くわけないと妹に示したかったのか、それとも妹を信用してるからなのかそんな言葉が自然に口について出た。

「宛名ないよー開けるよ」と裕美はその宛名のない封筒の中身が気になり、不思議と少し気持ちが高揚していた。すると中身はアンティークと言うか、洋風と言うか、宝箱でも開きそうな大きめの古びた鉄の鍵と黒い分厚い紙に金の文字で招待状と書いたメモ書きの様なものが入っていた。

「何か古い鍵と招待状みたいなのが入ってるよ。」

「何それ…」

ゆうきは招待状が送られてくる人生を歩んだつもりもなく、全くピンとこなかった。

「招待状…?鍵…?」

「何て書いてる??」

「えっと…4月26日午後5時下記住所にてとり行います。

鍵を忘れずご持参下さい…何これ?明後日じゃん…」

──無論、心当たりなどなかった…

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