名探偵助手 ムネシゲくん! 後編
さて、問題はここからである。
今回、バルグ=オルクメリアが提案し、強行した人族至上主義政策。それによって大量に生まれた犯罪奴隷は、当然ながら人族以外の種族である。
もし、人族がそれらの奴隷を購入した場合、家族に人族以外が存在することになってしまい、排斥対象に含まれるとなれば、人族で購入する者は皆無だろう。さらに、現在のナヴァル王国において、人族以外の者は
つまり、人族以外の犯罪奴隷は売れない、ということになり、奴隷商にとって
この不良在庫、枢機卿にとって、何か意味があるものなのだろうか?
人族至上主義である枢機卿にとって、王都での排斥は完了し、抵抗した者も奴隷落ち。その結果だけ見れば、彼にとって良い結果だったはずだ。
ならば、宗茂が感じている、ぬぐいきれない違和感はなんなのだろうか?
奴隷は社会的弱者、つまり人種族であると、天聖ネフルが認めている以上、人族以外の種族もまた
例え、犯罪奴隷に身をやつしたとしても、人族以外の種族の者達が、人であることに変わりはない。
そもそもの話、バルグ=オルクメリアが、なぜ5年前に、暗殺者を雇ってまで先代枢機卿を殺そうとしたのかが、宗茂にはわからない。
枢機卿の座もステータスボードもスキルボードも、
枢機卿の座。
スキルボード奪取。
人族以外の種族の排斥、結果生まれた大量の犯罪奴隷。
(なんだ……何かがおかしい、いや、違う。もしや、俺が
その時、宗茂は気づいた――自分が何者かを。
「……そもそも人族至上主義とはなんだ?」
「あ、そっか、宗茂は――異世界人だから知らないのか」
「人族至上主義は、かつてガルディアナ大陸に存在していた、ある宗教の基本理念だったんです」
「いけ好かない考えよ、人族以外は
「……滅ぼす…………壊す?」
宗茂の脳裏に、なにかが引っかかる。
「……その宗教と、神の名は?」
「フォルス皇神教よ。クソッタレな神の名は、神皇フォルス。別名――」
今この瞬間、宗茂は、枢機卿
「傲慢の……破壊神」
答えにたどりつくために欠けていた情報、それこそが、すべてをつなぐ鍵だった。
「
「え?」
「大量の犯罪奴隷を生け贄に仕立てて、その全てを破壊神に捧げる気だ」
宗茂の突然の言葉に、困惑するティアナとエリザだが、宗茂は構わずに言葉を続ける。
「そう考えると色々と腑に落ちるんだ、いいか、今の枢機卿に――
「誰って……」
「なにかを教わるなら親御さん、って、まさか!?」
「そうだ、間違いない。先代枢機卿ジルグ=オルクメリアが植え付けた、つまり――」
「……先代枢機卿も
「そうだ。そうなると前提がひっくり返る」
――先代枢機卿は殺されたのではなく、
――あの獣人の男が先代枢機卿を狙ったのも、生贄のことを知っていたから。
宗茂は、どうにも不可解であると思っていた獣人の男の動機についても確信できた。
そして、今まで考慮する必要のなかった事柄が、存在感を示す。
「……もし、使い古したステータスユニットとスキルボードを
「は? なんでそんな……えっ、いや……まさか、そんな……そういう、ことなの?」
「おそらくはな」
――先代枢機卿ジルグ=オルクメリアは、当時の身体を捨て、別の身体、例えば、拉致した幼児などにステータスユニットとスキルボードを接続することで、
そして、この憶測は、さらなる憶測を呼び寄せる。
「そういうことよね、ムネシゲ?」
「ああ、おそらくな……
死んだと見せかけて擬似的な転生を実行し、ふたたび権力中枢へと戻り、身体が古くなれば、擬似的な転生をふたたび実行する。
それを延々と繰り返すことで、地位と名誉と権力を何年もの間、その手に納め、得られる恩恵全てを甘受する。
それが、人族至上主義者であるフォルス皇神教のやり方。
だから、だからこそ――
「アタシみたいな『
本人の身体とステータスユニットに表示される
「……でもこれで――」
「ああ、誰が敵なのかがはっきりした」
エリザを狙う者の正体が見えた。
宗茂とティアナが、討つべき者たちの影を捉えた。
枢機卿バルグ=オルクメリアと先代枢機卿ジルグ=オルクメリアの擬似転生体。その背後で暗躍する、存在していないはずのフォルス皇神教。
(敵は捉えた。ならば次は、すべきことをするだけだ――)
「まずは、奴らの大切な
獣人、亜人、魔族にとって大切な
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