つまらない狂人

エリー.ファー

つまらない狂人

 和武器の花、凍えて眠れ雛菊の河。

 涙を流す人を捨てていく暴走。

 星々に願いを込める暇なく死んでいく、研究者たちの悲劇。

 好調を失うな、涙を溜めろ。

 余計に思い浮かべるべき正直さこそが、十進法を失うのだ。

 さすが変わらずに生きていこうとする予兆である。

 暮れなずむ町にこそ傷が癒えると心得よ。

 千年の時を超えて、今ひらすらに前を向く十四光。

 千歳団旗と言うに及ばず。

 アンカーを投げずに動き出す、自浄作用。

 光線銃でこそ見えてくる弾みのイチゴショートケーキ。

 一銭あれば闇に似る。

 高僧のための夕景である。


「この詩はなんですか」

「意味があるんです」

「ないように思いますが」

「いえ、あります」

「では、説明をしてください」

「いや、説明はできないんです」

「何故ですか」

「無粋じゃないですか」

「説明できないんでしょう」

「できますよ」

「じゃあ、お願いします」

「いや、だから無粋だって言ってるじゃないですか」

「違いますよね。できないだけですよね。逃げてますよね」

「逃げてませんよ」

「アートっぽかったら逃げられると思ってませんか」

「だから、逃げてないですって」

「逃げてる人はみんなそう言うんですよ」

「私は違います」

「そういう言い訳は、頭が悪そうに見えますよ」

「見えるだけで、実際に頭が良いかどうかとは関係ないじゃないですか」

「頭が良いかどうかは本人が決めるものではなくて、周りの評価によってほぼ決まるものですよ」

「私にとっての周りにあなたは入っていません」

「そうやって私の存在を認めていることで、既に私はあなたの周りに入っているということになるんですよ」

「なりません」

「どうして頑なに認めないのですか」

「だって、おかしいではないですか」

「どこがおかしいのですか」

「私のことなのに、何故、私が決められないのですか」

「それはあなたの問題であって、私の問題ではないので知りません」

「私は決めることができる人間です」

「そうですか」

「そうです。絶対にそうです」

「でも、私の言葉を聞くだけで、自分が決められる人間であるかどうかを疑ったではありませんか」

「疑っていません」

「疑っていないのであれば私を無視すればいいじゃありませんか」

「無視しなかったのは私が優しいからです」

「私に優しくする理由とはなんですか」

「私は私以外の人にも優しくできる人間であろうと努力しているからです」

「努力しているということは、できていない時があるということですね」

「そういうことになりますね」


 この対談については非常に難解かつ示唆に富んでいるため、いまだに研究が盛んにおこなわれている。

 一説には、これらはフィクションであったとも言われている。理由としては、対談を企画した杉本高石出版の編集者である日出雄一郎とこの対談の主である二人、田堰派の水田洋子と詩人である紅浩一郎が元々同一人物ではないか、との噂が当時もたっていたことに起因する。

 水田洋子は対人恐怖症であることを理由にこの対談以外はすべて断っており顔写真がない。紅浩一郎は対談をしたい相手がいないとの理由でこの対談以外を断っており、顔写真があるものの本人であるとの証拠がない。

 そんな謎多き、この対談とその関係者である編集者、評論家、詩人について。

 これからゆっくりと時間をかけて説明していくこととする。

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